181202 ここの市民オペラシリーズを観るのは「魔笛」、「トゥーランドット」に続いて3度目。
市民の手作りでこれだけ盛り上げるのだから大したもの。
初日の出来栄えも素晴らしかったらしいが、2日目も立派な舞台だった。
鈴木麻里子は9月のプッチーニ三部作でも見事な歌いっぷりと巧みな演技で大いに公演の成功に貢献していたが、このアイーダでも、見事な演唱で聴衆を魅了!なにせヴェルディ後期の代表作、それもタイトルロールだから、文字通りの大役であり、本番を迎えるまでの苦労も並大抵ではなかったことと思われる。
対するラダメスの上本訓久、輝かしい高音が持ち味のテノールであるが、エンジンがかかるのに多少時間がかかるタイプなのかも。「清きアイーダ」の出だしには若干不安を覚えたが、どんどん響きが良くなって行くのが分かって一安心。開幕直後にいきなり来るアリアだけに、大変なのはよく分かる。歌い終わって、ホッとしたのか、マエストロにウィンクしていたのが印象的。
脇役ではアムネリスの杣友恵子が、抜群の存在感を堂々と見せつけていた。歌唱もさることながら、王女のようなきらびやかなコスチュームを纏わせると、この人ほどぴったりする歌手はそうざらにはいないと思わせる。グランドオペラ向きのメッゾであることは間違いない。
アモナズロの大塚博章も期待通りの安定感、低音の響きも盤石。言うことなし。奴隷としてエジプトに連行されたエチオピア王なのだが、立派な衣装で、しかも帯剣姿というのは、細かいことを言えば、リアリティに欠けるのだが、ま、この際、どうでもいっか。
このマエストロ、随分詳しい略歴で、これまでの多方面に亘る活躍ぶりは理解できるが、手腕はよく分からない。三浦安浩の演出は時としてかなりぶっとんだことをやるのだが、ここでは、かなりまともな演出ぶりで、やや意外。ただ、エジプトの砂漠の夜、アイーダがラダメスから作戦に関する秘密を聞き出す場面に、なぜか奴隷女を3人、傍に登場させてなにやら妖しげな動きをさせるのは、意図不明。
本オペラ・シリーズは、合唱団から派生して生まれたわけで、市民オペラにふさわしい成り立ちである。拝見するところ、高齢者がかなりの部分を占めているのは明白なれど、よく鍛え上げられた技を示せたと言えよう。合唱指導の谷 茂樹が、カーテンコールで、ど真ん中に位置することでも窺い知れる。
市民オペラゆえに、当然低予算の中での上演と思われるが、舞台装置がよく出来ていて感心しきりだった。内部に階段をつけた三角形を縦横に組み合わせ、時にピラミッド、時に祭壇、時に牢獄と、実に巧みな使い分けていた。出演者たちは、内部の階段の上り下りがあり、歌いながらだと更にハードだったはず。
初っ端のアリア、「清きアイーダ」も上本が歌いながら上下していたが、きつい演出をつけたものである。
バンダを受け持ったのは桐朋学園大学音楽学部の学生たち。アイーダ・トランペットの演奏は素晴らしかった!
合唱指揮者がプリマとマエストロに挟まれるとは、滅多にない絵柄である。
楽屋裏へ駆けつけたところ、タイミングよくちょうど衣装、メイクのままでの集合撮影をしていて、ギリギリ便乗できたのは幸運だった。一番後ろのエジプト国王(山田大智)とランフィス(小幡淳一)は、二人とも、声は低いが、見上げるほどの偉丈夫。たまたまだろうけど、伝令(川出康平)がベストポジションに陣取っている。
#72 文中敬称略