ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「二人の女王 メアリーとエリザベス」

190325 MARY QUEEN OF SCOTS 英 124分 監督:ジョージー・ルーク(42歳、英国人女性)

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顔の造作も対照的な二人

あまりにも知られた話だし、これまで数えきれないほどの文学、戯曲、TVドラマ、映画などに登場する二人だが、本作では果たしてこの二人がどのように扱われるているのか、大いに興味をそそられた。

最もそそられたのは、史実にはないのに、あえて二人を直接対面させ、言葉を交わした場面。境遇は違えど、互いに世にも数奇な運命に翻弄された者同士、しかも血縁(映画では従姉妹として描かれているが、実際にはヘンリー7世の孫とひ孫だから、ちんば従姉妹、従姉妹違)関係にあれば、互いへの関心は強くないはずがない。

そして、メアリーは自分の運命を決定づけるいくつかの言葉をエリザベスに吐く。あまりにも、その発言に衝撃を受けたエリザベス、自分にはそのつもりがなかったにもかかわらず、次第に側近たちの言葉にそそのかされ、ついに重大な決断をしてしまうのだった。

冒頭は、黒装束で現れたメアリーが刑場に着くと、お付きのものが突如左右から衣装を引っ張り、一転真紅の衣装となる。その続きは映画の終盤で再開となる。1587年2月、イングランド中部のフォザリンゲイ城の一隅。44歳。(天正遣欧少年使節団の在欧時期と重なる)

フランス宮廷では、王妃として優雅な暮らし向きだったのもつかの間、夫であるフランソワ2世が急死、故郷のスコットランドへ戻るところから映画は始まる。この時、メアリー、19歳。

異母兄ジェームス・スチュアート、従兄弟筋のダンリー卿、実力者ボズウェル伯などさまざま人物が登場する。そこへ宗教問題(メアリーはカトリック、エリザベスは英国国教会)なども絡み、さらにピエモンテ人の音楽家、デイヴィッド・リッチョを秘書として重用するなど、まあめちゃくちゃやるもんだから、破綻は時間の問題。

彼女のおかげで宮廷内で力をつけてきたリッチョは、それを面白く思わない貴族たちに目の敵にされ、こともあろうに、メアリーの眼前で惨殺されることになるのだが、その部分がいやに生々しく描写される。

メアリーは幼少時からフランス育ちのため、母国語よりフランス語が堪能で、お付きの女官たちともしばしばフランス語で話すシーンが。仏語のできないシアーシャ・ローナン、特訓した甲斐あり、それほどの違和感のないやりとりになっている。まあ楽器や歌唱に比べればどうということもないのだが。

さて、主役のシアーシャ・ローナンだが、13歳で「つぐない」('07)にデビュー、その後も話題作に出演して美少女の名前を恣にしたが、長ずるにつれて、容貌も変化して、かつてほどのインパクトが感じられなくなったのは残念至極。アメリカ生まれのアイリッシュ。Saoirseはケルト語由来だから、発音が・・・。本人も、いつくか使い分けていると聞く。シャーシャ、スーシャ、シアーシャ・・・。現在25歳だが、19歳から44歳までを演じるには幼さ顔もあいまって、ちょっとこの役には向いていない印象を受ける。

一方の4歳年長のオージーマーゴット・ロビー、「アイ、トーニャ、史上最大のスキャンダル」('17)で、トーニャ・ハーディングを演じて話題になった女優。かなりシアーシャとは対照的。いささかごついが、野性味があり、野心むき出しという顔つきもあいまって、これはいいキャスティング。例のベッタリ白塗りやカツラを脱いでボサボサ頭になったりと、なかなかの熱演。

全体の2/3はメアリーを、1/3をエリザベスと、ほぼ交互に描き分けるという手法を取っていて、ややこしい話ながら、いちおう理解できる筋立てにはなっている。

#18 画像はIMDbから