190418 ドニゼッティの「連隊の娘」と言えば、「おお友よ、なんと嬉しい日!」のハイC9連発で知られるオペラ。そのアリアはなんども聴いているが、肝心の公演そのものはまったく見る機会がない。そもそもそれほど日本であまり取り上げられないから無理もないのだ。たまたまMETライブビューイングで上映されていて、今日が最終日なので、慌ただしく出かけた。
これを歌うテノールはハビエル・カマレーナというメキシコ人。いやはや、大したものである。以前、ペルー出身のフアン・ディエゴ・フローレスで聴いているが、こうした甲高い軽めの発声を得意とするテノールは案外中南米出身が多いのかも。そう言えば、ラモン・ヴァルガスもメキシコ出身だ。歌い終わった時のブラーヴォと大拍手が治る気配なく、結局、その部分だけアンコールとなり、合計18連発!喉の状態はいかばかりだったろう。それだけ聴衆からせがまれたのはもちろん嬉しいことだろうが、ちょっと気の毒だった。
タイトルロール、連隊の娘、マリー役には南ア出身のプリティー・イェンデ。まだ34歳だが、すでにスカラ座でもメトでも主役をやるという逸材。確かに、この力強く、艶やかな発声が何の苦もなくできちゃうように見えるのが凄い!の一言。ベッリーニ、ロッシーニ、ドニゼッティなどが得意の分野のようだ。南アでもズールー族とかで、レチタティーヴォでは、舌の音を聴かせていて、ズールーの発音の特徴であることを、幕間のインタビューで明かしていた。
今回のインタビューアーは、これまた気鋭のソプラノ、ナディーヌ・シエラ(Nadine Sierra)。テキサス出身のアメリカ人だが、名前からするとヒスパニックで、現にカマレーナとはスペイン語で挨拶を交わしていたが、堂に入ったスペイン語だった。
ベルケンフィールド公爵夫人を演じたステファニー・ブライズ(Stephanie Blythe)の圧倒的な重低音にも驚かされた。
セリフだけの役どころでは、往年の名女優キャスリン・ターナーが登場。それにしても、太ってしまったのは仕方ないとして、声がガラガラ声で、まるでオッサンという風情。やはり出て欲しくないねぇ。81年の「白のドレスの女」が印象に残る。
最後は舞台奥に大きな雄鶏の映像が出て、やたら「フランス万歳!」みたいなことを言ってハッピーエンド。雄鶏はフランスの象徴。
舞台の床と背景はヨーロッパの地図を超拡大して、それを山岳地帯を表す高低差のある床と遠景の山々に使用していて、意表を突かれる。
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