190515 恥ずかしながら、前回空振りだった(会期前)ので、改めて上野へ。
グスタフ・クリムト(1862-1918)、19世紀末に妖しく光芒を放った画家として、またその日本趣味的画風からも、日本でもよく知られた画家。
この時代、すでに写真が使われるようになっていたので、彼の写真も多く出回っているが、アトリエ用での作業用なのか、ずだ袋のようなものを被っていて、風貌も冴えないのだが、どこか愛嬌のある人物。制作対象としての男にはまったく興味がなく、自画像もほとんど描いていない。ひたすら女、女、女!
事実、よくモテたらしい。結婚はしていないが、そっちの方は不自由していなかったとか。恋多き女、才女のアルマ・マーラーとも一時恋愛関係にあった。
そんな男が、まあ実にきらびやかな、まばゆいほどの作品、それも大作を数多く残している。今回、その中から上のユディット、下のヌーダ・ヴェリタスという代表作の一部が展示されたのは、嬉しい限り。
ちょうど世紀を跨ぐ頃に、彼のスタイルが完成したと言えるだろう。意外なことに、この頃から、それまで肖像画主体の画業に、風景画が加わり始めることだ。風景画も悪くない。代表的な大作「丘の見える庭の風景」(一番上のポスター背景)は死の2年前の1916年に描かれている。
また、今回のもう一つの目玉はウィーン分離派ビルの内側フリーズ部分に描かれたベートーベンフリーズ。壁画ゆえ、現地でしか見られない大作だが、実物大のコピーが展示されている。コピーと言っても、実際に同じ手法で描かれたもので、限りなく本物に近いと言える。
材料は、クレヨン、サンギーヌ(チョークの一種)、パステル、カゼイン絵の具(牛乳由来)、金、銀、漆喰、モルタルなど多岐に及ぶ。実物と同じ見せ方をしているので、オペラグラスを持参すべきだった。
1913-14頃に制作されたこの作品、なんと豊田市美術館所蔵である。トヨタ自動車からの寄付金で、17.7億円で購入したとか!!
ということで、彼自身の油彩画は25点(うち、風景画3点)、その他、彼の弟、エルンストの作品、同時代人の作品、油彩画以外の作品を含めると、120点の展示。残念ながら、もっとも関係性のあるエゴン・シーレの作品はここにはない。(国立新美術館で開催中の「ウィーンモダン クリムト、シーレ世紀末への道」展で見られる。