ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「girl/ガール」

190718 GIRL  ベルギー映画 脚本・監督:ルーカス・ドン

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⬆︎瞳の色に合わせたコスチューム、背景と白い肌の対比を強調したかのような、このポスターは印象的。

痛い映画である。辛い映画である。性同一性障害に悩む16歳の男の子が、一流のバレエスクールに女の子として入学し、一定以上の技量を示し、周囲もそれは認めつつも、奇異の目で見られるという微妙な空気の中で、もがき続ける孤独で過酷な世界をカメラがひたすら追う。

父親の理解が得られていることと、ホルモン療法など試しながら、彼女を支える医療チームの度量の広さが救いである。いずれ(2年先)性転換手術のことも視野に入れて活動を継続するが、日々耐え難くなって、とうとうその日、重大な決断をする。親にも誰にも相談することなく。

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本人自身、やはりかなり女性的な風貌。

主人公ララを演じたヴィクトル・ポルスターが素晴らしい。この子がいなければ、この作品が果たして生まれたかどうかと思わせるほど、ぴったり!17歳のベルギー人で、実際にバレエ学校にも現在通っているというから、まあ、地で行っているようなものだから、これほどうってつけのキャスティングはあり得なかったことになる。

それにしても、周囲の注意に耳を貸さず、テーピングで前貼りで膨らみを隠し、またレッスンが終われば、これを剥がす作業の場面はあまりに痛々しく、見るに忍びなかった。

切り取り事件の後、髪もショートにしたララが爽やかにさっそうと歩く姿でジ・エンド。バレエ界で前向きに生きようとしてるのか、あるいは別の世界に進もうとしているのか・・・。

本作はララの姿を追い続けるから、ハンドカメラ多用で、バレエのシーン、それも同じようなシーンが連続するので、途中、かなり飽きるのが、ちょっともったいないかな。切り取り事件直前に、自らスマホで救急車を要請するあたり、冷静すぎて、とても17歳の子がする行動ではないように思えた。そう言えば、救急車を要請する理由を言わなかったのも不思議だ。

徹頭徹尾ララに寄り添い力づける父親の姿が、見ていてちょっと辛くなる。母親はどうしているのか、まったく描かれておらず、説明もなかったのがやや不自然か。

#45 画像はIMDbから