190907 今年3月に2018-2019シリーズの「カルメン」を見ている。➡️その時の記事
演出・振付・指揮は今回とまったく同じで、さらにドン・ホゼ役もロベルト・アラーニャ、大きく異なるのはのはカルメン役が今回はエリーナ・ガランチャというところで、彼女のカルメン見たさにわざわざ暑い中、東劇まで行った次第。
やはりガランチャ(44歳)の偉大さがよく分かる。演技のキレが全然違う。これを見ると、2019ヴァージョンでタイトル・ロールを演じたフランス人クレモンティーヌ・マルゲーヌ(35歳)が、歌唱はともかく演技にぎこちなさが目立っていたことがよく分かる。ガランチャと比べるのは気の毒過ぎるが。
今回のアンコール上映は、今からちょうど10年前の公演だ。この時、ガランチャは34歳、妖艶な演技は堂に入ったもの。これほどのカルメンは滅多に見られないと思う。顔立ちもラトビア出身だが、彫りが深くスペイン風で、体型も締まっている。どうしても、前出のマルゲーヌは分が悪い。
ホセ役のアラーニャ、10年前はこんなにも艶やかでよく通る美声だったんだと改めて10年の重みを知ることになった。
ラストシーン近く、ホセが手にしていたのはなんと本物の短剣で、カルメンの顔面近くの床に突き立てた迫力が凄かった。実際にカルメンを刺すシーンでは、正面からは死角にして、うまく刺したように見せていて、巧みな演出だ。
今回、ミカエラ役には名手、バルバラ・フリットリ。10年ほど前に東京で聴いていて、巧さは確認済み。この方、かなりししおきが立派なので、通常の清楚なミカエラではなく、いかにも田舎から出てきたおっかさん風で、絵的にはそれはそれでいいのかもと無理やり自分を納得させた。
エスカミリオを演じたテディー・タフ・ローズは3時間前に急遽代役依頼があったと、幕間のインタビューで明かしていたが、その割には十分稽古していたようで、大きな破綻はなかったものの、やや地味なエスカミリオで、さらに高音にいささか問題があるような印象。珍しくN.Z.出身で、地元クライストチャーチで32歳まで会計士をやっていたという異色の経歴の持ち主。
今回、3月の時より興味深く見られたのは、7月に日声協の合唱団で「カルメン」を歌ったいたので、自分たちが歌った場面を世界最高の舞台で合唱がどう歌うか実に興味深かった。
指揮のヤニック・ネゼ=セガン(何国人か分からないような名前だが、カナダ人、45歳、この撮影時は35歳!)の振り方は緩急がすごくはっきりしていて、タバコ工場の場面では遅く、しかも静かに歌わせているが、ラスト近くの合唱場面では俄然超特急となり、それについて行った子供達が素晴らしかった。
久しぶりに東劇に来たが、広々していて快適そのもの。とくに前の座席とのスペースが大きく取ってあり、後から来た客でもすんなり通れるのは素晴らしい!小学校時代、一時豊洲に住んでいて、この劇場が一番近く、結構足を運んでいた。「絶海の嵐」(セシル・デミル監督、ジョン・ウェイン主演)や「歌劇王カルーソ」(マリオ・ランツァ主演)などを見た記憶がある。
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