ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ジョーカー」

191013 JOKER 米 122分 製作・脚本・監督:トッド・フィリップス(「アリー/スター誕生」'18)

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なぜ自分がこんな州立の精神科施設にいるのか分からないアーサー(ホアキン・フェニックス)、でも、まいいか、他に行くところももないし、さぁ、暇つぶしにスタッフをからかうことにするか!

「俺の人生って、悲劇だって思ってたけど、実は喜劇だって、今気がついたよ!」ママがいつも言うんだ、お前はいつもニコニコしてなさい!それで人々を笑わせ、よろこばせられるでしょ!って。

何も悪いこともしていないし、汚いアパート住まいの母子家庭だけど、一応真面目に生きて来た、親孝行もしてる、今の仕事はピエロの格好して街頭で店の宣伝やったりして、稼ぎは僅かでも、他人に迷惑はかけてない。あの日までは・・・

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後ろから忍び寄って来たクソガキたちに、この大事な看板を取られて、取り返そうと必死で走ったら、逆にガキどもに殴られ、看板は壊されるわ、怪我するワ、ひどい1日!まさかこれがその後の恐ろしい”事件”のきっかけになるってんだから、世の中分からない。

映画は、アーサーが徐々に追い詰められ、まさかの行動に出るまでを執拗に、そして丁寧に追う。

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車内で息子を構わないでと注意され、急にとめどなく大笑いを始めるアーサー。

⬆︎実はこれトゥレット症候群という病気で、そのため、それを説明するカードを持ち歩いている。本作の時代設定、1980年代初期の段階では、こうした病は容赦なく社会不適合者としての烙印を押されることに。

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一仕事終えて、地下鉄車内で3人の証券マンに絡まれるアーサー。

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凄みのある「ジョーカー」のメイクと衣装。メイクの下の表情は・・・

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22kgも体重を落としたホアキンだが、身のこなしは軽快だ。

喜劇の後にたどり着く悲劇、チャプリンのモダンタイムスを意識してか、映画館で上映中のモダン・タイムスを主人公が見入る場面が。また狂気が高じ始めた時の主人公の表情が「タクシー・ドライバー」のロバート・デ・ニーロにかぶる。

本作が見たくなったのは何と言ってもホアキン・フェニックスの演技!この役作りで24kgも体重を落としたと言うから凄まじい。普段からヴィーガンのフェニックスだが、それだけ体重を落とすのは並大抵のことではない。りんごとレタスのようなものしか摂取しない日々だったらしいが、それでいて逃走シーンやダンスシーンの身のこなしは驚嘆しかない。

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鬼気迫る痩せっぷり!

彼の日本公開作品はほとんど見ている。一躍ホアキンの名前がクローズアップすることになった「グラディエーター」での、それこそ狂気の皇帝コモディウスの演技が忘れられない。もちろん自ら歌ったジョニー・キャッシュ物語「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」も忘れがたい名演技だった。

これまでジャック・ニコルソンや亡くなったヒース・レジャーほか、さまざまな役者がジョーカーを演じているが、彼らの影が薄くなるほど、圧倒的なホアキン・ザ・ジョーカーである。

#63 画像はIMDb,およびALLCINEMA on lineから