ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「コートールド・ギャラリー展」@東京都美術館

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同展のHPから概要を以下に抜粋。

ロンドンにあるコートールド美術館のコレクションから、印象派・ポスト印象派の作品を紹介。実業家サミュエル・コートールドが収集したコレクションを核に1932年に設立された同館は、美術史や保存修復において世界有数の研究機関であるコートールド美術研究所の展示施設。本展覧会では、その研究機関としての側面にも注目し、画家の語った言葉や同時代の状況、制作の背景、科学調査により明らかになった制作の過程なども紹介し、作品を読み解いている。

この美術館、昔、まだコートールド美術研究所付属画廊と言われた時代に一度だけ行ったことがある。1968年の夏。添乗員としてロンドンに立ち寄った際、誰かに誘われて行った記憶がある。従って、何を見たのか定かでないが、この「フォリー・ベルジェールのバー」のことはよく覚えている。あの頃は、ラッセル広場の一角にあったが、今はテムズ川に面する堂々たるサマーセットハウス内に移転している。

実はこの美術館展、以前東京で開催されているのである。姉によると1997年12月に、なんと日本橋高島屋で開催されたというから驚きだ。しかも131点も展示されたというから、今回の展示数の倍以上である。今回同様、その時も改修工事中に貸し出し先として東京となったようだ。今回展示されている作品はほぼ全部22年前にも来ていたようだ。

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何と言っても、同美術館を代表する作品として断然光を放っているのがこれだろう。先日のNHK日曜美術館でも詳しく紹介されていたが、いろいろ謎に満ちた作品ということになっていて、まずは構図が実際にはあり得ないというもの。もちろん、そんなものは画家が自由に構成すればいい話だから、謎というほどのこともないし、このバーメイドを正面向きに描けば、鏡に写っている後ろ姿は、こちらからは見えないのだから、このようにずらすことで解決しているのだ。

またこの無表情さについても、同番組では、いろんな人がいろんな意見を開陳していたのが面白かった。まあ、その辺は見る人の勝手だからねぇ。この時代のマーメイドは娼婦という別の顔ももっていて、そういう風に時代背景を考えれば、確かに様々な解釈ができる表情である。背景についても、細かく見れば実に興味が尽きない。

本展では、サミュエル・コートールドの邸宅の壁面とおぼしき映像が館内の壁面に投影されており、当時の雰囲気をかすかながら辿ることができる。こういうところ、日本の美術館はうまく対応していると思う。

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「大きな松のあるサント・ヴィクトワール山」 ポール・セザンヌ

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「秋の効果、アルジェントゥーユ」 クロード・モネ

遠景の高い塔は、工場の煙突と思われがちだが、実は教会の鐘楼とか。

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「桟敷席」オーギュスト・ルノアール

舞台より客席を眺めている後ろの人物(モネの弟?)の姿が面白い。手前の女性も見られていることを十分意識しているポーズ。

 

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これも超有名な作品だが、おなじ絵柄で何点か制作していて、それらが図解入りで紹介されていた。二人バージョンの他に、5,6人バージョンも存在していること、初めて知った。

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自身、税関吏だったアンリ・ルソーが描く「税関」。想像上の場所らしい。

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「窓辺の女」 画法をいろいろ試したドガ、本作では、精油に溶かした絵の具を使用。未完成。

今回の展示作品は、油彩以外も含めて60点ということだが、60点ということだが、どれも貴重な作品ばかり。改修工事が完了すれば、当分日本にこれだけまとまって来ることは考えられないので、美術ファンには必見!12月15日まで!