ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「トスカ・ドラマの転換」@日生劇場

191111 劇場から案内をいただいていたイベントに。

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このシリーズも回を重ねて26回目

あいにくの雨で、出足はいつもより鈍かったようだ。過去何度かこの催し物には参加している。

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はじめに、演出、舞台美術、衣装、照明の責任者によるパネルディスカッションが映像入りで開催された。

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今回の舞台装置が驚くほど緻密に製作されていたことで、その舞台裏を知ることができたのは大収穫。やはり実踏とでもいうのか、美術担当の横田あつみがローマに赴き、サンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会にしろ、ファルネーゼ宮(現在はフランス大使館として使用されているため、内部は見学不可だったらしいが)にしろ、実際に現地で見聞しているからこそ、これだけのものが作れたのだろう。

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実物大を製作する前の過程として、こうした模型を作るようだ。第1幕、第2幕使いまわし。

一部を入れ替えるなどして、骨格部分は見事な使い回しで無駄な費用を切り詰めていることが分かる。

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第3幕、サンタンジェロ城の屋上部分。幕開けと「星は光りぬ」の詠唱の場面では、下手側は幕で隠されていて、銃殺の場面からこちらが主舞台となる仕掛け。

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パネリストたちが舞台上で詳細に説明してくれる。

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キャストたちがどのように登場するかなど、動きについても音入りで説明。

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今回、紗幕を効果的に使用しているが、このイタリア全土地図も紗幕。

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回し舞台は人力。実際に動かして再現。

主として舞台上で解説してくれたのは演出の粟国 淳。この人は生まれこそ東京だが、父親の仕事の関係で幼少時からローマで育っていて、今もローマに自宅があるそうだから、ほとんどローマ人。

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衣装の早替えは、いちいち袖に下がる時間がなければ、舞台転換の際に影で30秒でやることも。

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後半は見学者たちがいよいよ舞台に上がる。

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衣装の豪華さに目をみはる見学者たち

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実に豪華な衣装。左からスカルピア、トスカ(1幕)、トスカ(2幕)、カヴァラドッシ

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トスカが花を捧げた祭壇。近くによるとこのマリア様、案外画質の粗いコピーを使用。

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カヴァラドッシが作業中のマリア像

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Te deum laudamusの場面。(日生劇場のサイトから)

衣装担当の増田恵美によれば、トスカの時代設定は1800年の6月という、かなり具体的。その年号で、その季節でローマではどういう衣装が実際に着用されていたかまで考察して決めていったそうだ。そこまで細かく考えて衣装を決めていく作業が求められるのだから、どれだけ神経を使ったことだろう。白は不可ということから、かなり鮮やかな組み合わせの1幕の衣装になったとのこと。

2幕では、一般的には情熱的な赤の衣装で「歌に生き、愛に生き」をトスカに歌わせることが多いのだが、演出側から今回は青でという注文があり、こうした鮮やかな青の採用に至ったそうだ。

また、照明の凄さというか大変さも、今回の説明を聞いて、初めて全貌が分かったような次第。紗幕が降りている場合など、スポットの位置が限られてくるための難しさなど、担当の大島祐夫から細かく語られた。

文中敬称略