191226
「歌の会」という、割に地味な名前は、器楽演奏に対して、という単にそれだけのことらしい。音楽監督の飛鷹佑依(ひだか・ゆい)が進行役も務めるが、冒頭、この組織の概要に触れた。それによると、若い音楽家たちへの演奏の場の提供と、一般聴衆向けに身近なクラシック・コンサートの提供を主目的に1990年に結成されたというから、もう30年にもなる。
MUSECEDEという、やや覚えにくい名称は、音楽の女神、ミューズと、ドイツ語の分離を意味する単語による合成語ということらしい。クリムトたちが唱えた、あの分離派のCESESSION!
上のチラシにある演目中、「今の歌声は」(セヴィリアの理髪師)は、R.シュトラウスの「アモール」Op.68-5に変更。(梅津 碧)。チラシになくて歌われた曲の中ではロッシーニの「アルジェのイタリア女」(山川真奈)が素晴らしかった。
最後に「シャンパンの歌」で盛り上がった後、アンコールとして、「ハバネラ」(山川真奈)、「私が街を行くと」(梅津 碧)、「星は光りぬ」(城宏憲)が歌われて、ちょうど2時間(途中15分の休憩時間を含む)の演奏会が終演。雨模様との予報もあったが、なんとか天気も最後まで持ちこたえてくれた。
梅津 碧は超高音域が難なく出ちゃうという、これは天性のものだろうが、これにうまさが加わり、ますます楽しみなソプラノ。
今回、初めて聞く山川真奈が、とりわけ低音域で幅のある声を響かせ、カルメンなどはぴったり!大柄で舞台映えするところも得難い存在。ヴェローナ在住だから、あまり日本での出番は多くないかもしれない。それが日本のファンにはちょっと残念。
城 宏憲はデビューからちょうど10年というところで、最も旬なテノールの一人。聞くたびに進化していることが確認できて嬉しい。声に潤いと幅が一段と加わって来ている。一時、かなり喉を酷使ししていて、心配したものだが、もうすっかり落ち着いたようだ。
#81 文中敬称略