200130 Ford v Ferrari 米 153分 監督:ジェームス・マンゴールド
単なるカーレースの話かと思うと、さにあらず。かなり奥行きの深い作品であることが分かってくる。タイトルにあるように、それまでのカーレースでは絶対王者であるフェラーリにフォードがあの手この手で立ち向かい、ついに完膚なきまでにフェラーリを叩きのめしたところで映画は終わる。
興味を引かれたのは、家内工業的フェラーリに対し、巨大組織フォードの組織内の描き方で、三代目CEOであるヘンリー・フォード2世に取り入ろうとするが、ことの本質が見えない、見ようとしない幹部たちvs.現場人間たちで、日本でもよく見る対立構図である。現場のトップは、伝説のレーサーからカーデザイナーに転じたキャロル・シェルビー(マット・デイモン)であり、彼の陣頭指揮の下、実際に車を動かすレーサーの中心は天才的な発想と行動で奇人扱いされる英人レーサー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)。ベイルの英国訛りの英語が面白く、「おい、ちゃんとイングリッシュでしゃべれよ!」と米国人に毒づかれる場面あり。ちなみに、奥さん役のカトリーナ・バルフ(Caitriona Balfe)はアイリッシュ。
ハリウッドを代表する二人の関係が巧みに描かれていて、笑い、かつウルウルくる場面、少なからず。ベイルは、この作品のためにまたまた凄い減量をしたようだ。その前に撮った「バイス」では、ディック・チェイニーを演じるため、相当増量していただけに、半端ない痩せ方。20kgぐらいの増量、減量を繰り返すのは絶対に身体に悪いから、彼のファンでなくても今後の健康具合が気になるところ。
ところで、カーレース作品と言えば、中学に上がったばかりで見た「ジョニイ・ダーク」('54)を筆頭に、三船敏郎のハリウッドデビューとなった「グラン・プリ」('67)、スティーブ・マックイーンが実際に運転した「栄光のル・マン」('71)、そして割と最近の、大事故に遭ったニキ・ラウダとジェームス・ハントの友情を描いた「ラッシュ/プライドと友情」(2013)など、話題作はかなり見ている方だが、撮影や音響技術の圧倒的な向上によりレース・シーンの出来が素晴らしく、この作品も映画館で見ないと魅力半減だろう。
#3 画像はIMBdから