202014
我が家からは近くもないのに、職場が新宿だったためか、せっせと通ったこの美術館だが、いよいよこの会場での最後の展覧会となった。通称パンタロンビル、旧安田火災海上本社ビルができたのは1976年春。その後、現在の損保ジャパン日本興亜ビルに名前を変更。ビルのオープン直後にできた当美術館もそれに合わせて東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館という長ったらしい呼称に変更されている。ちなみに新しい美術館はこのビルの新宿駅よりのすぐ脇に間もなくオープンする。
この展覧会は初めてだが、法人格変更(公益財団法人)の際に創設されたそうで、今回で8回目だそうだ。本展の詳細は、→ 損保ジャパン日本興亜美術賞展
そこで触れているように、本展の特徴は、
新進作家の動向を反映する公募コンクールとして定着。
「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を公募した結果、幅広い年齢層の875名の新進作家たちから応募があり、四次の「入選審査」と二次の「賞審査」を経て、国際的に通用する可能性を秘めた、入選作品71点(内受賞作品9点)を決定。
不確かな社会情勢の中、創作活動には困難を伴うが、時代の感覚を捉えた、きらりと輝くものが数多くあった。油彩、アクリル、水彩、岩絵具、版画、染色、ミクストメディアなど技法やモチーフは多岐にわたるが、見る者の心に潤いと感動をもたらしてくれることは共通している。
いくつか、自分の目にとまった作品を主催者から特別な許可を得て撮影した。
⬆︎木村 不二雄 崖屋美術館 (Riverside Museum of Art) ろうけつ染(墨)・綿布 112x162 2019 審査員特別賞
表面の凹凸が際立つ。横から見るとそれがよく分かってこの作品の面白さが伝わる。正面から平面的に見ると、それが伝わりにくい。木目込み、染色、スタイロフォームで仕上げたとの説明。スタイロフォームは合成樹脂素材で発泡スチロールの一種らしい。なるほど、めずらしい画材を使うものだ。
箔の使い方が絶妙。
鉛筆でひたすら食パンの質感を追求。
日曜画家で、航空機の専門家である兄によると、右下の飛行機はP-51MUSTANG。第2次大戦では米国で最も性能の良い戦闘機で、朝鮮戦争でも活躍した、ロールスロイスのエンジンを付けて成功した米国機だとか。模型であっても、胴体の幅をもっと狭く、垂直尾翼の形状をもっと直線的にすると実機に近くなるとか、詳しい解説が。
「うーむ」と思わず唸りたくなる作品。なんか分かるなぁ〜。
緻密な作業には脱帽。近づいていくと「ぽつんと一軒家」の世界。
この会場で見ると、一番ノーマルっぽい作品。キャンバスに油彩がほとんどなかったせいかも。
偶然なのだろうが、窓に映った影をうまく撮りいれた作品。
思わず触りたくなるような表面。凹凸がありルービックキューブを思わせる。
「告白」とした事情はなにか。中央のくっきりした縦の線が意味ありげな。
作者の猪上(いのうえ) 亜美さん。上野動物園で、この動かない鳥、ハシビロコウをスケッチ、麻紙に数ヶ月がかりで制作されたそうだ。色もすてきだが、特有の哲学者のような風貌がよく捉えられている。
最近の絵画傾向を端的に知りたい愛好家は必見。会期は3月15日まで。月曜日休館。