200316 RICARD JEWELL 2019 米 131分 製作・監督:クリント・イーストウッド
間もなく90になろうとする監督が作った作品とは思えない。そう言えば、日本でも100歳で亡くなる前の年に「一枚のはがき」を撮った新藤兼人という凄い監督がいたが。
1996年アトランタ・オリンピックの時に起きた爆破事件を扱った作品。第一発見者であるリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー、この役のために10kg増量)という警備員が、当初その英雄的行動により、事故を最小限に留めたとして英雄扱いされるが、一夜明けたら、容疑者扱いという、よくある冤罪を描いている。
結局、第一発見者=犯人説という、単なる過去の事例からいい加減な解釈で動いたFBIの大失態なのだが、地元メディアをFBIがうまく抱き込んでジュエルを犯人に仕立て上げたことがやがて明らかに。
主役のジュエルと言う男、いわゆるオタクタイプで、アメリカ人の中でもかなりの肥満タイプ、ゆったりした口調など外見的にはいかにも誤解されやるいところが災いしたのは間違いない。そうした点を、見抜いていた昔の職場仲間で、現在は弁護士をしているワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)が彼の弁護を引き受けたことで、事件解決に繋がった。
見るからに鈍重そうな立ち居振る舞いにも関わらず、なかなか機転も利くし、母親思いで、かつ従順なジュエルが、実は事の本質を見抜いていて、見事に権力に一矢報いるくだりは胸のすく思いがする。
事件から7年後、真犯人が逮捕される。ジュエルは警察官として出世しているが、44歳の若さで亡くなる。(肥満が一因かも?)FBI捜査官とつるんででっち上げ記事を書いた地元紙のジャーナリスト(オリヴィア・ワイルド)も、自分が犯した罪の深さから薬物中毒にかかり早死にしている。
冤罪事件は、国内外を問わず珍しくないが、一夜にして英雄から容疑者という扱いは珍しい。それにしても、FBIや検察というところは、このようにして犯人をでっちあげていくという典型例を見せつけられたようで、そのおぞましさには戦慄を覚えてしまう。
#12 画像はIMDbから。