ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「在りし日の歌」

200403 地久天長 中国 脚本・監督:ワン・シャオシュアイ

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中国東北部の地方都市、1970年の終わり頃から30年に渡って、一人っ子政策に翻弄される普通の夫婦の軌跡をたどる。183分と長い作品だが、飽きることなく画面に見入ってしまった。どうでもいい挿話もあるにはあるが、全体によくできている。

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主演の二人がいい。取り立てて美人でもない女房と、じゃがいも顔の亭主、似合いの夫婦だ。このキャスティングが成功の第一歩。こういう気配りがいい。ここに美女やイケメンを投入されたら、ぶち壊しだ。

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時代感たっぷりの光景

隣人たちには恵まれて、ほとんど親戚づきあい。楽しい日々だっただけに暗転の辛さに耐えかねた二人は、住み慣れた土地を後にする決心を。

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一人息子シンシンを事故で亡くした夫婦、紆余曲折を経てもらい子をするが、結局いつかず、出て行ってしまう。2度めの別れだ。

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死んだシンシンとは生まれた頃からの幼馴染みのハオハオ、立派に成人して・・・。

出て行ってしまった二人目の息子(養子)が、その後成人して父親が経営していた工場を継ぐという突然の知らせをケータイで聞いて涙する二人、そしてゆっくりエンドロール。

どれだけこうした悲劇を産んだかわからない天下の愚策「一人っ子」政策!確かにあの時代は放置しておけば人口爆発は目に見えていたので、やむを得なかったのかも知れないが、やり方が下品、というかいかにも一党独裁国家がやりそうな、人権もへったくれもないもので、慌てて修正しようとしたが、もう間に合わない。今度は日本以上の少子高齢化に悩むわけだ。

それにしても映画を見ていると、中国の近代化のスピードには改めて目をみはらざるを得ない、と同時に日本は逆に停滞しっぱなしという体たらくで、その差をまざまざ見せつけられもする作品。

チェロが折々に奏でる中国版の「蛍の光」のメロディーが効果的に使用されていて、深く印象に残る。

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主演の二人はベルリン国際映画祭でそれぞれ最優秀賞を受賞するという快挙。

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映画祭での集合写真

#16 画像はIMBdから