ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ポーギーとベス」METライブビューイング

200702 コロナ禍で本来とっくに終わっていた上映期間が延長になり、ぎりぎり最終日に見に行った。映画館での鑑賞はちょうど3ヶ月ぶり。例年だと年間100本ぐらい見ているから、今頃は50本を超えている時期。これが17本目!ま、でも見られるようになっただけマシだが、帰宅したら東京の新規感染者が100人越えと知って、またしばらく映画館からは遠ざかざるを得ないかも。

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主役の二人、エリック・オーウェンズとアンジェラ・ブルー。名唱、名演技には大喝采

あまりにも有名なガーシュインの傑作だが、知っていることと言えば「サマータイム」程度。それをいきなりMETの公演をライブビューイングとは言え鑑賞できたのは、実にラッキーであった。

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この映画館、休業中にスタッフが入れ替わったのか、普通は入口で渡されるはずの

スケジュール表が渡されず、仕方ないから休憩中にもらいに行った。


正味、3時間少々とグランド・オペラ並みかそれ以上に長いオペラである。西欧ものと異なり、舞台がアメリカ、サウス・カロライナ州、チャールストンの海辺に近いCATFISH ROW(ナマズ横丁)で、出演者は全員アフリカ系アメリカ人。さらに曲風もクラシックとジャズと、土着の民族音楽フュージョンという異色作。ガーシュインが亡くなる2年前の1935年の作品ということだが、彼もしてやったりの出来栄えだったに違いない。

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回舞台に仕込まれているのは2段になった横丁の一角で、右端にはポーギーのあばら屋が。

全員が黒人というのもすごいが、一人一人の歌唱力やら身体的表現力の、他の人種には見られないパワフルさには、ほとほと圧倒され感動させられた。客席まで汗が飛んできそうな、それほどの風圧を終始感じた3時間だった。

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ベス役のソプラノ、アンジェラ・ブルー、この相手役、スポーティング・ライフ(テノールフレデリック・バレンタインを二回りぐらい凌ぐ体格だから、とてつもないエネルギーを発散しつづける。巨体に似合わず、顔と表情は実に愛らしい。

 

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オペラの冒頭、「サマー・タイム」を熱唱するクララ役のゴルダ・シュルツ、本キャスト陣では、唯一の非アメリカ人。南ア出身。

このオペラで最も知られたアリア「サマー・タイム」が、冒頭でいきなり歌われることも知らなかった。(これでオペラ愛好家と言えるのか、我ながら大いに疑問だ!)

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ダンサーたちがまた素晴らしい。もう身体に染み付いた動きをそのまま舞台で繰り広げるだけという印象。ついでながら、身体的にも白人種や他の人種にはない逞しさや手足の長さを全面に漲らせていて壮観!

合唱ももちろん大迫力だし、ソリストが時折アドリブ的に音を変えたり、ひねったりすることがあっても、即対応する力があるとは、休憩時のインタビューで、さきほどのバランタインが明かしていた。

他所ではまず見ることのできないこのような贅沢な公演が見られて大満足。客席は特別な措置が講じられているから、ガラガラ!劇場にはちょっと気の毒なほど。

#17 (画像はMETライブビューイング公式ホームページから)