200920 DEUTSCHLAND 83 独
文字通り、1983年の東西ドイツ(主としてベルリン)を舞台に繰り広げられた東西陣営の対決をインテリジェンス・防諜を軸に描いた作品。全8話と割りに短いので見やすい。
ベルリンの壁崩壊まであと6年という時代、米はレーガン大統領、ソはアンドロポフが書記長、融和的なゴルバチョフが登場するまでまだしばらく待てねばならない。両者激しくやりあっていた頃で、レーガンは好んでevilという言葉を使って相手を激しく挑発していた。東独にはブレジネフと親密だったホーネッカー、西独はコール、そんな時代背景。
東独側では、西独に配備された米の中距離ミサイル、パーシングIIが実際に使用されるのでは、と戦々恐々、情報集めにやっきになっているところで、当局は若い学生にすぎないマーチンに西独軍の某中佐になりすまさせて、情報を得ようとする。前後のことがあまり描かれないので、いつ露見してもおかしくない、かなり無謀な計画に見える。
一定レベルのスパイとしての訓練はしたのだろうが、西ドイツ軍の中心的存在である将軍の側近に取り立てられ、重要な会談に陪席したり、米国からの重要人物のアタシェケースから重要文書をミノックス(当時としては抜群の性能を誇る超小型カメラ)で撮影するなど、ついこの前まで素人だった男には到底無理な活動をさせる。
彼のスパイ活動、一定の成果は見られるが決定的な情報を得るには至らないうち、露見し、必死で国境を超えて、生き延びる。しかし、その代償はあまりにも大きかった。双方に多大な犠牲を強いることになる。なんとも後味の悪い幕切れながら、当時の世相や景色が忠実に描写されており、それを見るのも楽しい作品。東独を走り回っていた例のおもちゃのような国民車トラバント(愛称トラビ)も登場するし、一般家庭内の家具や什器備品類を見るのも楽しい。
また、せっかく盗み出したアメリカ側の機密文書がフロッピーディスクで、東独側では、これに対応するコンピューターがなく見られないという笑えるような展開や、日本海上空で大韓航空機がソ連により撃ち落とされた事件も挿話として含まれていて、本作の信憑性を高めるのに一役買っている。
続編として、「ドイツ1986年」が既に作られているようで、早くアマプラで見られるといいのだが。
ちなみに愚亭はロンドン発着の旅行代理店対象の東独研修ツアーに1985年秋に参加し、東独の主要都市を巡る機会に恵まれ、本作で当時の記憶が鮮やかに蘇った次第。