ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「これからの人生」@Netflix

201217 LA VITA DAVANTI A SÉ(彼の前にある人生)不謹慎かも知れぬが、 ソフィア・ローレンの遺作になるかも知れない重要な作品を見た。その前の出演作は10年前の「NINE」。現在86歳のソフィーアさん、次男坊エドアルドの監督作品でもあり、本人が強く希望しての出演となったもの。ちなみにエドアルド・ポンティ監督の、これが母子共作の3本目に当たる。

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時代は現代、舞台は南イタリアのバーリである。イタリアはここ20年以上にわたってアフリカからの難民に悩まされている。さしずめバーリも彼らの目指す代表的な町となって久しい。バーリは単なる玄関口、上陸地で、ここから北を目指すという流れが一般的。しかし、当然ながら、中にはそのままここに居座るアフリカ人も少なくない。

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英語タイトル

モモ(本名はムハンマド)という12歳の少年もそんな一人。学校にも行かず、定住先もなく、今日も泥棒稼業に忙しい。市場を歩く主人公マダム・ローザ(ソフィア・ローレン)に目をつけたモモ、ひったくりには成功するが、金目のものもなく、当面世話になっている医師、コーエン先生(名前からしユダヤ系)のところに寄ると、その盗品をたちまちローザのものと見破られ、そのままローザの元に連れて行かれてしまう。

本人から詫びを入れさせ、とりあえず、一件落着となるも、コーエンは事情があって、しばらくこの子を預かって欲しいとローザに頼み込むのだった。誰がこんなガキを!と一蹴するローザだったが、いつも世話になっている先生だけに無下にも断りきれず、最後は条件付きで預かることに。

実はローザ、アウシュヴィッツの生き残りで、しかも娼婦で生計を立てていたという壮絶な過去を持つ。家には、他に同居人が3人。娼婦仲間の幼な子二人とトランスジェンダーの娼婦ローラ(演じているのは性転換したスペイン人女優?)。そこへ新たにモモが加わったということで、さらに複雑な家庭環境となる。

やさぐれモモは、常に警戒心が強く、鋭い目つきで人を寄せ付けない空気をまとっていて、当然周囲とは相入れない。それでも、次第に気持ちを落ち着かせ、穏やかさを取り戻していく。やがてローザの老衰が進み、認知症の症状も現れ始めることに気づくと、彼女の介護をごく自然に始めるのだった。

絶滅収容所を思い出すとして、ローザが常々病院を嫌がっていることを知っていたモモ、ある日、車椅子で彼女を病院から脱出させ、住まいの地下にあるローザお気に入りの秘密の部屋に連れ戻すのだった。似たような辛い過去を持つ同士、いつの間にか家族以上の絆で結ばれていたのだった。

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息子のエドアルド・ポンテイ監督と

本作は、この11月に劇場公開される予定だったが、感染が治らないため、劇場公開を断念、ネット配信に切り替えたという。はやばやと新作が見られて、ラッキーだった。

ところで、黒人少年モモを演じたセネガル出身のイブラヒマ・ゲイェ、検索しても詳細不明。おそらく自身、難民の一人だろう。自然な演技には魅了された。