ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」

201226 MAUDIE 監督:アシュリング・ウォルシュアイルランド出身の女性監督)

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脚にちょっとした障害を抱えているだけなのに、周囲はなぜか冷ややか。それでも、温かい心と強い意思の力で、どんな恵まれない環境だろうと、それを跳ね返す強靭さも持ち合わせているモード。しかも、幼い頃からお絵描きが大好き。どこに行こうと、お絵描き道具は手放す訳にはいかない。

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今や家族と言えるのは兄だけという境遇なのに、なんと自分たちの家を勝手に処分しちゃって、叔母さんのところに住まわせてもらっているモードにはなんの相談もなく、絵の具と絵筆だけもって、「じゃあな!」って、なにそれ?

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彼らが暮らしたヤーマス付近の光景。


映画は、カナダ東端、ノヴァスコシア州の寒村で懸命に、でも明るく生きるモードを描き出す。叔母さんが自分を見る目も、まるで赤の他人なみだし、なんとか自力で食べていこうとしてあれこれ考え、試した結果は、なんと町外れのちっぽけな一軒家で暮らすエベレット・ルイスが募集している家政婦になること。それも、住み込みにしてほしいと強引にいついてしまう。無教養で無愛想なエベレットに「お前は犬、にわとりの下の存在!」とまで言われても、へこまないモード。

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一部屋しかない1階はこの通り。

家事のかたわら家の中のちょっとしたスペースに絵を描き始める。うさんくさそうに黙って見ているエベレット。やがてあることがきっかけで、これが大評判となり、マスコミにまで紹介されるようになり、彼らの生活にも変化が現れると同時に、モードの体調も・・・。

フェデリコ・フェッリーニの名作「」を思い出さずにはいられない途中までの展開。エベレット役のイーサン・ホークもうまいのだが、主演のサリー・ホーキンスのうまさが断然光る。「シェイプ・オブ・ウォーター」でも感じたが、ちょっと風変わりなタイプを演じるのに独特の力を発揮する役者だ。

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モード・ルイス本人

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まるでアンドリュー・ワイエスの絵を彷彿させるシーン。