210516 RADIO KOBANI. オランダ、70分、監督:ラベー・ドスキー(クルド人)
一応オランダ映画ということにはなっていますが、クルドの作品と言ってよいでしょう。脚本、監督、主演、すべてクルド人ですから。
コバニというのは、シリアのトルコ国境付近の街で、例のIS(イスラム国とも)に徹底的に破壊されました。その廃墟、瓦礫の中から勇敢に立ち上がった一人の女性、まだ現役の大学生、ディロバン・キコが仲間とラジオ局を立ち上げ、打ちのめされたクルド人に呼びかけ希望を与えるという話で、ドキュメンタリーというスタイルで作られています。
セットでなく、実際の廃墟化した街を舞台にしていて、戦闘シーンなども実写を使用していると思われ、ハンディカメラ多用で、迫真の展開となります。女性兵士も勇猛果敢に戦っている姿が活写されていて、胸が熱くなります。
それにしても、残忍な戦闘を繰り返すISの悪行が赤裸々にあばかれ、割りに戦争映画をよくみている愚亭でも正視に耐えないシーンが前半続いて、思わずパソコン画面が顔をそむけることになりました。女性には勧めにくい作品です。
そういうシーンがあっただけに、この健気な主人公、ディロバンがすこしずつ街に静けさが戻り、人々の姿が街に増え、友達も出来、婚活のようなことをフェイスブックでやっている姿にほのぼのさせられます。それを見ている母親の娘に対する穏やか愛情表現がたまりません。やがて順調に交際が実って結婚式の場面が出て参ります。
それにつけても、実の姉をISに殺された過去を持つディロバンがことさら明るく振る舞う姿が目に焼き付きます。そして語る言葉も。「戦争には勝者はいない。勝っても負けてもどちらもが敗者である」という言葉がずっしりと胸に響きます。こんなに強い女性がいることを、何不自由なく豊かな生活を満喫し平和ボケしているような日本人には特に知って欲しいと思いました。