210521 ASPHALTE 仏 2016 100分 原作・監督:サミュエル・ベンシュトリ
見始めてから、あれ、これ、前に見たかもってなって、調べたら5年前にリアルタイムで鑑賞済みでした。でも、そのまま見続けました。なにせイザベル・ユペールさんとヴァレーリア・ブルーニ=テデスキさん登場ですから!
時代設定は、出てくる車やらTVセット(ちなみにSONY WEGA)で概ね1997年頃という感じです。舞台はどうやらパリ郊外の、かなり年季の入った古ぼけた団地にある1棟のマンション。老朽化進行中で、一部ではすでに取り壊しが始まっているところも。
そこの住人と外部の人間、3組が展開するお話です。時にとてもコミカルで、時にすこぶるシュールな進行が入れ替わり出てきて、飽きる暇はありません。
母親と二人暮らしという若い兄ちゃん、今日も愛用の自転車を軽々担いで自宅へ。入口で悪ガキたちと軽い挨拶。
何やら隣に越してきた訳ありそうな中年女性。引越し荷物の仕分けが大変なんで自然に手伝うことに。聞けば、女優だったと言うじゃありませんか。名前聞いても首を捻るばかりの青年。そりゃそうです。全然売れない女優だし、それもかなり昔の話。
それでも、せっかくだからと言うんで、昔の出演作品のビデオを一緒に観ることに。なんとなく気まずくなるような展開で、この場の空気感がいいんです。
いかにもチャラい感じの兄ちゃんですが、意外に感性に優れ、ズバリ鋭い助言を女優にしたりして、女優もすっかりその気にさせられ幸福感に満たされていきます。
一方、エレベーター改修費の支払い分担案で、一人だけ反対する男が。2階なんで、エレベーター使わないからという、いかにもフランス人的理由です。それならエレベーターは彼だけ使わせないという条件で議案は可決成立します。
このおっさん、理事長の部屋で見たルームランナーに興味を持ち、通販で購入。ところが、機械操作ミスで100km以上走り続けることになり、脚に障害が出て、車椅子生活。他の住人たちのエレベーター利用時間を克明に調べ、誰も乗らない深夜に利用することに。遠くには行けないから、近くの病院にある自販機が彼の食生活を支えることになります。
ある日、そこで休憩時間中に一服するために外に出てくる年増の看護婦と知り合いになります。なんとなくウマが合う二人、ぎこちないながらも交流が。たまたまカメラ(フィルム式)を首からぶら下げていたこともあり、職業を問われて、世界中を旅行するカメラマンと看護婦に嘘をつきます。んで、今度あんたを撮らせてと言われ、とてもそんな柄じゃないと尻込みするのですが、んじゃ、明日の晩にと。ところが、そういう時に限ってエレベーターが故障、閉じ込められて、彼女に待ちぼうけを食らわせてしまいます。
二人が見上げる上空にはNASAのヘリコプターが舞っています。
最後の一組は空から団地へ舞い降りたNASAの宇宙飛行士と、最上階で独り住まいのモロッコからの移住者、おばあちゃんとの心温まるお話。
一人息子の悪ガキが収監中で、さびしい一人暮らしの老婆。そこへ文字通りふってわいたようにアメリカ人の好青年が。手違いで降りてきたけど、NASAが迎えに来るまでいさせて欲しいと言われ、もちろんと即答。目元涼しげで、息子がいないから、彼の部屋を自由に使ってと妙に優しいばあちゃん。得意のクスクス料理を振る舞い、言葉が通じない中で心温まる交流シーンです。
やがて迎えがきて、涙涙。クスクスのお弁当を持たせたりと息子を送り出す老いた母親になりきっています!なにやら竹取物語のようではありませんか。そうして、ヘリコプターが轟音を轟かせ、強風をそこらじゅうに巻き起こして、-La Fin-
ちなみに、イザベル・ユペールさん、この時、62歳、上手に老けています。いろんな役柄を器用に演じ分けられる名優の一人。そして相手役の青年、ジュール・ベンシュトリは名前で分かりますが監督の息子。その後、「パリに見出されたピアニスト」で才能ある若きピアニストを見事に演じて話題になりました。名優ジャン=ルイ・トランティニアンの孫です。23歳。
2016年に書いた記事→「アスファルト」 - ぐらっぱ亭の遊々素敵