ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「泣いたり笑ったり」@イタリア映画祭

210611 CROCE E DELIZIA(直訳すれば、十字架と快楽だが、)、2019年、100分、監督:シモーネ・ゴダーノ(43歳、ローマ生まれ)

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主演陣では、かろうじてアレッサンドロ・ガスマンだけは知っていたが、かの名優、ヴィットリオ・ガスマンの息子ということで。

LGBTQものです。ちょっと意表をつく組み合わせで、最初はかなり居心地の悪いを思いをしました。映画が進むに連れて、落ち着いてはきましたが。

富裕層のトニ(ファブリーツィオ・ベンティヴォッリオ)一家と、労働者階級のカルロ(アレッサンドロ・ガスマン)一家が一夏、ローマ郊外で過ごす話です。同じ敷地内(トニの別荘の一部)であることから、互いに干渉は避けられません。

そうこうするうちに、実はトニとカルロが特殊な関係にあることが徐々に双方の家族内で知れることになります。当然、家族、とくにカルロの息子、サンドロ(フィリッポ・シッキターノ)やトニの娘、ペネローペ "ペニー”(ヤスミーネ・トリンカ)に与える衝撃がはんぱないのは大いにうなずけます。

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左からトニ、その娘ペニー、サンドロ、その父親カルロ

「なんでわざわざ今更、男同士で結構しなきゃなんないの!?」っていうのが子供達に共通する感情でしょう。それでもモヤモヤした、ぶつけようのない怒りが、日を経るにしたがい、徐々に変化していきます。やがて諦めに似たような感覚に、そして最後は・・・。まあ、ハッピー・エンドでよかったですが。

撮影はローマ近郊のガエータという海辺の町で行われたようです。イタリア人の感覚って、愚亭も学生時代にイタリア人家族と過ごした経験があるので、多少はわかりますが、感情の起伏をそのままぶつけ合うようなところがありますし、とくにローマを含む南部にその傾向が強いようで、怒りを露骨にぶつけ、そうかと思うとすぐ泣くし、しばらくすれば笑い合うという、およそわれわれ日本人には理解できないところが少なくないです。

この作品はまさにそうしたイタリア人独特の雰囲気がとてもよく出ていて、「ああ、やはりこうくるか、こうなるよな!」と自分の中では結構納得でした。サンドロだけがめいっぱいローマ方言なのが面白かったです。サンドロは身重のかみさんと一緒にきていますが、子供の名前をあろうことか、サシミにしようと話していて、笑ってしまいました。やめといた方がいいですね。

それと、トニが長女のペニーに、自分の感情を吐露する場面でなぜかフランス語なのです。ペニーがきょとんとして、妹じゃないから、フランス語で言われても、ってなって、親父が、ああそうだった、じゃ今のをイタリア語で言い直すよ。なぜかこういう内面的なことはフランス語の方がうまく説明できると思ってさ、という場面がまたおかしかったです。

また、二人の結婚式のパーティーと共に進行するエンドロールがすこぶるよかったです。