210624 プレス内覧会ですが、ありがたいことに、今回もまたブロガーも招待されました。
ランスと言えばReimsと綴って、こういう発音になるんですから、フランス語ってーのは厄介なシロモノなんですね。愚亭も大昔と昔、2度ここへ行きました。まずは大聖堂、代々のフランス国王がここで戴冠式をやったそうですから、いかに由緒ある場所か分かろうというもの。そして、ナポレオンと共にフランス人が最も誇り思っているのがジャンヌ・ダルク(1412-1431)ですが、戴冠式を行うシャルル7世と彼女もランスを訪れているのです。
ほかにはシャンパーニュの中心都市であり、またレオナール藤田こと藤田嗣治のチャペルがあることで、日本人訪問者も結構訪れるところでもあります。
ここの美術館、一度も行っていないのです。だいたいパリから車で日帰りとなるので、上に触れたところを見るのが精一杯で、そもそもそんなに立派な美術館があることすら、当時は認識していませんでした。
今回4年に亘る改修工事ということで、その間、まとまった作品がこの美術館に登場することになったのです。こう言うチャンスは滅多にないので、これは逃す手はないですね。では、配布された資料から抜粋してみましょう。
では、5階から順路にしたがって、3階まで鑑賞していきます。
まずはここにこれほどのヴォリュームでコローの作品があったことに驚かされます。16点の油彩画がずらりと展示されているのは、壮観ですらあります。彼の画面は概ね銀灰色の樹々、そして湖、沼など、常に水面が見えていて独特の情景を見せてくれます。パリ近郊のベッドタウン、ヴィル・ダヴレーや、もちろんバルビゾンなど、コローが好んで画題に選んだところですが、一方、留学中にイタリアで描いた作品群からは、思いっきり乾いた、そして澄んだ空気感が特徴の作品で、かなり対極の印象を受けます。
パリからフォンテーヌブローへ向かう途中にあるバルビゾン村です。ここはミレーも活躍したバルビゾン派の土地です。全体に寒村という風情ですが、それだけ自然豊かな土地柄です。
ここではクリシェ・ヴェールというガラス板印刷という手法に注目したいです。あまり知られていない技法でしょうか、愚亭は初めて今回実際の作品を見たような気がします。上にあるようにコローも試しているのですね。しかし、この技法はあまり広く採用されることもなく、やがて姿を消したようです。ただし、今でも当時とはかなり手法を変えて似て非なるものながら、存在はしています。
ウジェーヌ・ブーダンにまるまる1章を充てているのはちょっと意外でした。コローの半分以下、7点の油彩の展示のみです。ブーダンと言えば代表的な作品は当時のパリ人の避暑地でもあったドーヴィル/トゥルーヴィルの海岸とそこに群がる避暑客の群れでしょう。今回は1点のみ。残りは海景画でした。
いよいよ印象派の登場です。
3階は上の3点がまず目を引きます。クロード・モネかな、と近づくと、愚亭の知らない画家でした。マクシム・モフラ(1861-1918)の「モルビアン、キブロンのしけ」と「日没の岩礁」、そしてアンリ・モレの描いた「ケルレック島の眺め」という、いずれも、これぞ印象派っていう画風です。
その右隣もやはりモネを思わせる構図と色調ですが、こちらはアンリ・モレ(1856-1913)の「ケルレック島の眺め」です。
モフラはこんな作品も残しています。今回の展示作品ではありませんが、参考までに。
「プチタンドゥリス教会」川面の描き方など、モネの作品かと見まごうばかり。
というわけで、前半はコローの圧倒的な作品数と後半は印象派の少数ながら傑作が見られて大いに満足しました。会場での撮影は主催者から特別な許可を得て行いました。
会期は6/25~9/12と割に長いのですが、コロナ第5波で緊急事態宣言入りになる懸念がないとは言えないので、早めにご覧になるべきでしょう。