ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「狐狼の血 level2」

210907 シネマカード会社から間もなく有効期限切れと連絡してきました。映画館に行かないまま半年経過すると、こう言う連絡があるようだす。調べたら、確かにこの系列の映画館で最後に見たのは今年の春でしたからと納得。

とりあえず何か見ることにして、たまたま本作がかかっていて、他にみたい作品もなかったので、愚亭としてはめずらしいことに、この種のヤクザ映画を見てしまいました。かなり話題性の高い作品という理由だけです。

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なぜかスチール写真、ぼやっとしたものばかり。あえてそうしたのでしょう。

これって、前作があるということを、後で知りました。ということで、前作見ないまま本作を見たことになるので、厳密に言えば語る資格はないことになりますね。

舞台は広島の架空の都市ですが、呉であることはすぐに分かります。実際のヤクザ抗争事件をヒントに書かれた原作ですが、作者が女性ということに少なからず驚きました。尤も、本作の監督や脚本、製作、その他スタッフ陣には女性は一切関わっていないようです。あまりにもグロいシーンが多く、とても正視には耐えられるものではありません。

冒頭、東映の昔ながらの、大きな岩に波しぶきが上がる映像、もうずいぶん昔の印象があります。本編もそうですが、昭和感を出すためにあえて画質を粗くし、色彩も若干彩度を落としてありました。その効果はよく出ていたと思います。

二つの組織の手打ちを前作ではしたようです。その3年後という設定です。手打ちをさせたのが松坂桃李扮する刑事、日岡で、細身の割に案外膂力に長けた人物として描かれます。彼がどのようにして長年の抗争に終止符を二つの組に打たせたかは、前作に描かれたことになっていますが、相当ヤバい背景があったらしいことが徐々にわかってきます。

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柔和な顔で、これだけ人を恐怖に陥れる演技力に脱帽です。

本作の興味は刑期を終えて出所してきた組長、上林とこの日岡の激しい駆け引きとエンディングにあります。上林を演じる鈴木亮平は、「花子とアン」や「西郷どん」で見せた印象を完全に封印、これ以上あるかと思わせるワルぶりを画面いっぱいに見せつけます。怖いほどのド迫力で、この人にはこんな演技もできるのかと驚きます。

対する松坂桃李も、鈴木ほどではないにしろ、善人しかできないようなおとなしい顔からは想像ができないほどでして、ラストでのこの二人による凄絶極まる演技には、久しぶりに興奮した次第。厳密にはこれがラストシーンではなく、それから数年後の日岡の姿が描かれます。田舎の派出所の所長になってのんびりと暮らしています。

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