ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

イスラエル博物館所蔵 印象派 - 光の系譜展内覧会へ

211021 今回もラッキーでした。ブロガー対象の内覧会に応募したら、当選!

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何年か前にツアーでエルサレムには行っているのですが、自由行動の時間もなく、この博物館へ行くチャンスがありませんでした。したがって、なんの事前情報も持たずに出かけたのですが、いや、もうびっくりでした!印象派および時代的にその前後に活躍した超有名な画家たちの作品、それもこれまで一度も見た覚えのないものばかりが、ワンサカ!いや、もう久しぶりに興奮しましたよ、そりゃ。詳細は、三菱一号館美術館のHPをご覧ください。

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字は小さすぎて見えないと思いますが・・・チラシの裏面です。

いつものように入場時にブロガーに対して、以下のような注意書きが配布されます。

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これを見て、「やったぁ〜!」と受付で確認したこと、それは一点撮りがOKかどうか、ということ。「接写はダメ!」ということは、そうでなければいいってことですからね。基本的に、これまで一点撮りはずーっとNGだったのですから、喜びもひとしおというところです。

てなわけで、主催者さんのありがたい特別な許可を得て、撮りまくりました。

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ポール・セザンヌエスタックの岩 1865年頃

セザンヌ、26歳頃の作品ですから、手前の岩の描き方など、まだセザンヌらしくないですね。

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クロード・モネ、エトルタ、アヴァルの崖 1885年

このモチーフは色んな人が描いていますし、モネ自身も何枚も残していますが、イスラエルにもあったんですねぇ。そばで見ると筆致がかなり粗いのがよくわかります。これは構図的にはかなり上の方からの視点なので、ほかの作品とはすこし角度が異なるかも知れません。愚亭も何年か前にも再訪し、浜からじーっとこの崖を目に焼き付けてきました。

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アルフレッド・シスレー ロワン川のほとり、秋の効果 1881年

シスレーは一時期、このロワン川のほとり、モレ・シュル・ロワンに住んでいたので、この川はずいぶん描いている筈ですが、たっぷりと秋の日差しが斜めから射しているロワン川の風景です。

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チャイルド・ハッサム 夏の陽光(ショールズ諸島)1892年

恥ずかしながら、この画家の名前、まったく知りませんでした。ボストン生まれのアメリカ人なんですねぇ。初めはターナーの影響を受けたらしいのですが、その後、ニューヨークで開催された印象派展を見て、すっかり魅せられ、訪欧してじっくりその手法を学んだようです。この描き方には明らかにその影響が見て取れますよね。ちなみにショールズ諸島とは、アメリ東海岸メイン州ニューハンプシャー州の沖合にある島とか。愚亭はどこか南仏かと思いましたが。

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アルフレッド・シスレー サン=マメス、ロワン川のはしけ 1885年

また、シスレーを撮っちゃいました。やはり好きなんでしょうね、つい目が行ってしまいます。このタイトルになっているサン=マメスという町というか村は、ちょうどセーヌ川の上流で、ロワン川がセーヌに合流する地点に当たります。彼が住んでいたモレ・シュル・ロワンはここから3kmほどのところですから、この辺はシスレーの庭のようなもんだったんでしょう。ちなみに、ロワン川をさらに上流へ行くと黒田清輝や浅井忠などが一時期画作に励んだグレ・シュル・ロワンがあります。

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ポール・シニャック サモワの運河、曳舟 1901年

一目でシニャックと分かる点描画。題材のサモワとは、正式にはサモワ・シュル・セーヌといい、一つ上の画像にあるサン=マメスから20kmほどセーヌ川下流にある地点です。偶然ですが、シニャックシスレー、意外に近いところで制作していたみたいです。時代は異なりますが、面白いですね。

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ポール・セザンヌ 川のそばのカントリーハウス 1890年頃

いかにもセザンヌっぽい作品です。時代的にも絶頂期ではないでしょうかね。

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クロード・モネ 睡蓮の池 1907年

出ました、睡蓮が。何十点と描いていますがこういう縦型の構図は少ないようです。今回は特別展示として、国内の三つの美術館から借り出した作品が3点、一堂に会するという貴重な展覧会となりました。さすがにこれら連作の一点撮りは禁止でした。まあ、今回の目玉とも言えるというと、イスラエル博物館には失礼かも知れませんけどね。それにしても3点とも日本の美術館が所蔵しているという点も、面白いですね。DIC川村記念美術館和泉市久保惣記念美術館、そして東京富士美術館(八王子)です。

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ジャン=バティスト=カミーユ・コロー モルトフォンテーヌ、小さな柵へと続く道 1850年

コローの作品は入口付近に4点並んで展示されていますが、この作品はなぜか別のコーナーに展示されていました。木々、特に葉っぱの描き方が微妙にそれら4点とは異なり、全体にのっぺりとした筆致になっていることが意外でした。いろいろ描き方を試したいたのでしょうか。

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カミーユピサロ 朝、陽光の効果、エラニー 1899年

ちょっと不思議な絵です。ちょっとピサロらしくない感じがします。朝、陽の光と雲の様子がいつもと違って見えて、描いたのでしょうか。同じ対象を時間を変えて、あるいは季節を変えて描く手法はモネが得意とするところですが。

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コロード・モネ ジヴェルニーの娘たち、陽光を浴びて 1984

そのモネの作品。やはり光にこだわっているのがわかりますが、まったく陰影をつけない画法が特徴的な作品です。積み藁を娘に見立てているそうです。積み藁は連作でモネの代表的な作品でもありますが、これはかなり趣きを異にしています。

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フィンセント・ファン・ゴッホ プロヴァンスの収穫期 1888年

まったく見たのことのないゴッホの作品です。そう言えば、これも積み藁が主題になっていますね。2年後、悲劇的な死を迎えることになります。

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ポール・セザンヌ 湾曲した道にある樹 1861-1862

塗り残しが結構見られる作品。奥行きがひろびろと感じられる構図です。

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フィンセント・ファン・ゴッホ 麦畑とポピー 1888年

最後の2年間は特に多作だったゴッホ。死期を悟ったかのごとく。

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ポール・セザンヌ 陽光を浴びたエスタックの朝の眺め 1882-1883年

構図といい色調といいこれぞセザンヌという作品です。

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ポール・セリュジエ 風景 制作年不詳

「風景」とそっけないタイトルですが、ゴーギャンのいたポンタヴァンで彼の指導を受けたとされているナビ派の一員ですから、これはポンタヴァンの風景なのでしょう。

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ポール・ゴーギャン ヴォージラールの家 1880年

ヴォージラールはパリ近郊の町の一つ。家並みがいい塩梅に収まっています。色調も断然素晴らしい!

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ポール・ゴーギャン 犬のある風景 1903年

ちょっと馬っぽい犬ですが・・・”いる”ではなく、”ある”としているのが気になります。彼は1903年5月に亡くなるので、ほぼ最後の作品と考えれます。

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ポール・ゴーギャン ウパウパ(炎の踊り) 1891年

かなり変わった作品です。タヒチでの作品です。踊る姿が堪能的すぎると当局から展示に待ったがかかったとか。太い樹が手前にあって、奥で人が動いている構図は「天使とヤコブ」(1888)とよく似ています。

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フィンセント・ファン・ゴッホ アニエールのヴォワイエ=ダルジャンソン公園の入口 1887年

手前や奥の筆捌きがすこぶる印象派的です。

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カミーユピサロ チュイルリー宮庭園、午後の陽光 1900年

この”午後の陽光”とか、”朝の光”とか、副題に付けている作品が少なくないですね。その辺りは印象派らしく、光を大いに気にしている感じがします。この作品も、初春でしょうか、とても空気感がよく描かれているのではないでしょう。遠くに起重機らしきものも見えますが、この時代はまだ出現していませんでしたね。と思ったら、1900年なら、クレーンは稼働していたらしいです。

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レッサー・ユリィ 夜のポツダム広場 1920年代半ば

恥ずかしながら、この画家のこともまったく知りませんでした。名前からしてゲルマン系ですが、ポーランド生まれのドイツ人画家、版画家です。ずいぶん大胆なタッチが現代的なことに驚きます。

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レッサー・ユリィ 冬のベルリン、1920年代半ば

これも同じ画家の、同じ時期に描かれた作品。カーユボットを思わせるような描き方ではないですか。

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エドガー・ドガ 《障害競走》のあるアトリエ 1880-1881年

これは見るからにいわくありげな作品なので、脇に掲示された文章をそのまま貼り付けます。

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珍しい構図です。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール レストランゲの肖像 1878年

彼の作品群の中でも、筆捌きが結構異彩を放つ作品だと思います。とてもルノワールさを感じます。

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同じくルノワール マダム・ポーランの肖像 1880年後半

黒をここまで大胆に塗りました。

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同じく。花で飾られた帽子の女 1889年

ルノワールっぽさ、満開です。

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カミーユピサロ ジャンヌの肖像 1893年

あまり肖像は描かなかったピサロの数少ない肖像画

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エミール・ベルナール マリー・ルマッソンの肖像 1892年

北フランス出身のポスト印象派に属する画家です。筆致にゴーギャンの影響が見られるように、なんと三度もポンタヴァンに行っていて、肝心のゴーギャンと会って話したのは三度目の正直ということです。意気投合して、一時は「総合主義」などを二人で唱えたようですが、後に絶交したそうでうから、何があったんでしょうかね。

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レッサー・ユリィ 赤い絨毯 1889年

なんともおしゃれな作品です。赤い絨毯の上で、黒いコスチュームの後ろ姿はなにを縫っているんでしょうか。

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ピエール・ボナール 食堂 1923年

1点だけの展示となったボナールの作品です。今回の展示作品は全部で69点、そして特別展示の3点を加え、72点となりますが、時代的には本作の1923年が飛び抜けて”新しい”作品となります。

というわけで、全体の半分もここで紹介していませんが、他の作品も名品揃い。こんな展覧会は見逃すわけにはいかないでしょう。会期は来年の1月16日までです。

今回、内覧会に行けたことはもちろん、一点撮りまでできたのは望外の幸せでした。