211022
天下のコバケンと気鋭の百音(モネ)、豪華競演です。などと書くとコバケンさんには大変失礼になりますが、この際、お許しいただくとして、連日東京の新規感染者数、減少していっていますが、まだ第6波の懸念もあり油断禁物です。めずらしく楽団員はだれも演奏中マスクをしていないのですが、マエストロ一人、マスク着用でした。1940年生まれですから、すでに80歳を超えています。用心するに越したことはないでしょう。
それと、気になったのは、腰痛気味ではないかということです。そんな仕草がなんども見られました。また、百音さんがアンコール(クライスラーの「レチタティーヴォとスケルツォ」のスケルツォ)を演奏する際、マエストロはもちろん指揮台が下り、第1と第2バイオリンの間の通路まで後退し、いったん山台に腰を下ろすような素振りを見せた後、さらにそこを下りましたが、ちょっと辛そうに見えました。
実績も人柄も飛び抜けているマエストロ、前半ではかなり動きに精彩を欠くというより、セーブしていたように見え、かなり省エネの振り方で、後半に備えているのかと思いました。「炎のコバケン」という印象からは遠かったです。V協だから、ソリストに集中してもらえた方がいいですからね。
彼女、本当に初々しくて、演奏中は腰まである黒髪をゆすりながら、ダイナミックな奏法に徹していましたが、終演後、まごまごしている姿がとても可愛らしかったです。マエストロに促されて、コンマスと腕タッチをしたり、なんどか不安そうにマエストロの顔を伺っている様子がとても微笑ましかったです。
ところで、1楽章のカデンツァ、本当にすばらしかったのですが、最高音となるファルセット(弦を指で押さえず、触れるだけの奏法)、愚亭の耳には到達しなかったのです。以前から高音部の難聴は加齢が原因と診断されていましたので、知ってはいましたが、うーん、かなりショックでした、今日は。
それから、ソロの出番がない箇所で、何度も左手で弦を撥ねて音を確認する仕草があり、気になりました。それとコンマスの楽譜台の裏側にセットしたハンカチ置きに何度も取りにいき、汗を拭う場面がかなり多く、相当緊張していた様子が窺い知れました。やはりコバケンは巨匠ですからねぇ、百音さんにとっては緊張するのも無理からぬことと勝手に察していた次第。
今日の愚亭の位置は、ティンパニーを真横から見る席でしたが、マエストロはもちろん表情まで見えましたし、百音さんも結構身体を捻りますから、時に真正面になることもあり、とりわけ管楽器の演奏に注意して鑑賞しました。こう言う位置ですと、今まで気づかなかった音を管楽器が出しているという新発見の連続で興味深かったです。半分負け惜しみですが、怪我の功名としておきましょう。予約が出遅れた結果です。
V協2楽章のクラリネットの低い連続技には痺れました。それとフルートが1楽章のヴァイオリンの主旋律を吹くところもたっぷりと堪能しました。終演後、ソリストへの喝采が一段落すると、マエストロがつかつかと弦楽器奏者の間に分け行ってクラリネット、バスーン、フルート、オーボエ、それぞれの首席奏者を立たせて喝采を浴びさせていました。それほどこの曲では重要な役割を演じた4人でしたから。
後半は最も好きな5番!のっけから、ロシアの荒涼たる冬景色のイメージをクラリネットが吹き始めるとゾクっときますね。ほんとにチャイコフスキーって、こういう劇的かつ超甘美な色合い豊かな作品が書けちゃうんでしょうか。この作品では、とりわけホルンの長いソロが最も印象に残りましたし、マエストロが誰よりもまっさきにホルン首席奏者を指さしたのは当然でした。
P席の中央に陣取ったおばさま、あらかじめ持ち込んでいたBRAVOの文字入りタオルをひらひらさせるのはいいのですが、立ち上がって、いつまでも振り続けるのはいかがなもんですかね。ちょっとやりすぎで、単なる目立ちたがり屋って思われてしまいますよ、適当なところでやめないと。
今日は6人のコンバスの中に一人だけフランス式のボウイングをしているおっさんを発見、なんか嬉しくなります。日本では完全にドイツ式が普通になっていますから。