ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「マンク」@Netflix

211228 MANK 米 132分、2020  脚本:ジャック・フィンチャー、監督:デイヴィッド・フィンチャー

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高評価の作品という認識あれど・・・多分、このタイトルが何を指しているか知らず、次回視聴候補作品に長くとどめていました。MankはMankiewiczの省略形で、この長ったらしい姓の愛称なんですね。スペリングからハンガリー系というのは分かります。この名前で知っているのは唯一、ジョセフ・マンキウィッツだけで、このハーマンというのは、彼の兄貴で、ジョセフ以上の偉大な足跡をアメリカ映画界に残しているのを本作で知りました。

したがって、余程のアメリカ映画通でないと、本作の凄さはよく分からないってことになりかねません。全体に会話シーンがながいので、いい作品と思いつつも、なんども眠くなりました。

時代はハリウッドの黄金時代、1930年代の終わりから40年にかけて、舞台はカリフォルニアです。あのオーソン・ウェルズが出てきます。主人公のマンクより20年も年下なのに、いろいろ指図して実にエラそうです。とにかく大変な奇才で、それだけの権限を映画会社から委託されているんですから。ウェルズもマンクの才能を見抜いているからこそ、脚本を依頼してきたのです。60日で書いて欲しいと。

これが映画史上金字塔となる「市民ケーン」の裏舞台となる作品なんです。脚本は監督の父親のジャック・フィンチャー。2003年に亡くなっています。もっと早く本作にとりかかろうと思っていた息子のデイヴィッド、なにやかやで遅れます。父親にこの企画を持ちかけたのは息子だというから、これもすごい話です。

全編、モノクロで撮影していますが、画面が実に美しい!録音もわざわざモノラルにし、リール交換時に画面の右上にチラッと出るマークもデジタル撮影なので、つけるという懲りようです。

主人公役、つまりマンクに扮するゲアリー・オールドマン。この人、実に多作のイギリス人(ロンドン近郊New Cross)ですが、本作で改めて名優だと知りました。93回アカデミー賞主演男優賞こそ取り損ないますが、映画の中では、市民ケーンでマンクは脚本賞をゲットします。あとから脚本に手を入れたウェルズの同時受賞ではありましたが。

当時は、第2時世界大戦の最中で、やがて太平洋戦争も始まるかという、かなり社会的に不安定の時代で、貧富の差が広がり、貧困層社会主義を目指すなどの動きも、本作で取り入れられていて、いろんな話題を詰め込みすぎた嫌いもありますが、2時間ちょっとでうまく編集したと感心もさせられました。