ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ミロ展 - 日本を夢みて」内覧会@Bunkamura ザ・ミュージアム

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これ、おしゃれなポスターです。彼の色使いでミロと描いています。

本展の内覧会に参加。ミロに再会するのは・・・何年ぶりかよく覚えていません。ヨーロッパには通算で10年ほどおりましたので、バルセロナを筆頭にずいぶんあちこちで見ているのですが、なかなかまとめて鑑賞する機会がありませんでした。そんな時にこういう企画があり、ラッキーなことに、内覧会の抽選にも当たり、そそくさと久しぶりとなる渋谷へ繰り出しました。

ジュアン・ミロ(1893-1983、8と9を入れ替えただけで覚えやすい!それにしてもピカソ同様、長生きでした。)が、日本絵画に深いつながりをもっていたことは、あまり知りませんでした。まあ、あの時代、特に画家はジャポニズムに影響を受けた人は少なかったので、そのこと自体、驚くにあたりませんが。

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スペインのバルセロナで生まれた大芸術家、ジュアン・ミロ(1893-1983)。ピカソと並ぶ現代スペインの巨匠として日本でも広くその名は知られていますが、ミロの創作活動の裏側には日本文化への深い造詣があったことは意外なほど知られていません。一方日本では1930年代からミロの作品が紹介され、世界に先駆けて1940年にモノグラフ(単行書)が出版されるなど、日本は早くからその活動に注目をしてきました。そして現在も日本各地の美術館が数々のミロの名品を収蔵しており、今なおミロの人気は衰えません。

本展では、若き日の日本への憧れを象徴する初期作品から代表作、そして日本で初めて展示されたミロ作品を通し、相思相愛であったこの画家と日本の関係に迫ります。さらに本人のアトリエにあった日本の民芸品や批評家の瀧口修造との交流を示す多彩な資料を通してミロと日本の深いつながりを紐解き、ミロというよく知られた画家を約130点の作品と資料で新たな角度からご紹介します。

以上はザ・ミュージアムのHPに書かれておりますので、ぜひご覧ください。⇨ミロ展

奔放な色使いと構図には圧倒されるというより、癒されたりやすらぎを感じます。こういう感性は、彼の生まれたカタルーニャの土地柄なんでしょうね。ピカソ、ダリ、あるいは斬新な建築家、A.ガウディやD.ムンタネーを生んだところだけに、なにやらとてもある種、”土臭さ”が作品に漂うように感じます。

当然ながら、書き始めた頃は、どの画家にも共通しますが割に普通の、と言ってはいいすぎですが、そんな作品が多いです。例えば、これ。

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「シウラナ村」1917年 油彩、キャンバス 吉野石膏コレクション(山形美術館寄託)

これなんか、ちょっと中景の家々なぞセザンヌ風ではないでしょうか。ウネウネしているところはゴッホを彷彿させるし、まだ後年の独自の画風を思わせる要素はあまりないように感じられます。

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「アンリ・クリストフル・リカルの肖像」1917 NYC近代美術館

上の作品と同じ1917年の作品。入口付近に最初に見るのがこれですが、凄いですよね、色も線も、そして背景には浮世絵まで。これは、もうただものではないとはっきり。サインが縦書きですから徹底しています。どちらも24歳の時の作品ですから、ある意味、ピカソ以上に作品のメタモルフォーズが早いです。

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面白いですねぇ〜、ひげから目が魚の骨みたいに描かれ、煙らしい黄色の先がたばこの先端なんですかね、赤く火がついたように。いやあ、楽しい!

ところで、内覧会ですが、撮影自由というわけではありません。ギャラリー・トーク開始前にスタッフから諸注意があり、一点撮り(作品だけを収める撮り方)可能な作品とそうでない作品、確認しながら撮影するようにと。著作権のことです。その後、担当学芸員から展覧会の概要やミロとその作品についての説明が20分ほど。

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担当学芸員の吉川貴子さん。本展の目玉2点の前で。

どのようにして日本、あるいは日本アートとの接点が生まれたかなどを中心に分かりやすく。

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「焼けた森の中の人物たちによる構成」1931 ミロ財団 これは、日本で最初に展示された記念すべき作品なんだそうです。

いやあ、もうこれなど完全にミロ・ワールドですね。茶目っ気のある顔が覗きます。

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ここは、カタログの説明をそのまま引用しましょう。

バルセロナで気鋭の画家として活動していたミロは、さらなる飛躍を目指し、1920年に芸術の都パリに行き、独自の表現を模索します。時に一般的な画材ではない素材を効果的に用いるなど「素材との対話」を深める一方、絵を「描くこと」と文字を「書くこと」を同じようにとらえたミロは、「絵画と文字の融合」を追求するようになります。
本展のみどころの一つでミロの絵画と文字による独自の表現の代表作として挙げられる《絵画(カタツムリ、女、花、星)》は、56年ぶりの来日を果たします。
文字を絵のように扱う描き方は、日本の書の関心へとつながっていきます。戦争によりマジョルカ島へ逃れた1940年頃から、ミロは日本の墨と和紙を用いて描線の太さや濃淡の実験を繰り返し行うようになりました。書のような自由闊達な黒い線と、従来からの丁寧で細い描線による人物たちが共存する最も美しい例の一つとして、《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》が出品されます。

冒頭のトークで説明がありましたが、絵の中に文字を入れるのも日本の絵では古来、ごく普通に行われていたことであり、その辺も大いに興味を惹かれます。

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「ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子」1945 福岡市美術館

これは一点撮り禁止作品。学芸員による解説だと、西洋絵画で背景が真っ黒というのは珍しいと。(パオロ・ウッチェッロなどはどうなんだろう)これも日本画の影響らしいです。チラシによると、「書のような自由闊達な黒い線と、従来からの丁寧で細い描線による人物たちが共存する最も美しい作品例の一つ」だそうです。どこがオルガンなのかよく分かりませんが、これぞまさしくミロ、ここにあり、って感じです。

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今度は焼き物の世界です。

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くたびれたので、少し早めに退館しました。それにしても、今回出品作の所蔵先が日本の美術館が多かったこと!当方が知らないだけで、世界的なアート作品、日本には結構ごっそりあるんですよね。

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来るたびに変貌する渋谷の夜景。

今回は、主催者さんから特別な許可をいただいて撮影しました。毎度のことながら、ありがたいです。

なお、会期は来月17日までで、あとひと月しかありませんので、あまり悠長に構えていると、見損なうかも知れません。ミロを国内でまとめて手際よく見られるこの機会をお見逃しなく!