ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ザ・サーペント」@Netflix

220512 THE SERPENT 2021 英国TVドラマ 1シーズン、全8話 一話がほぼ1時間なので、割に楽に見られます。監督・製作総指揮(共):トム・シャンクランド(ほとんどTVドラマ専門)

1960~70年代の雰囲気の出たポスター

これまた実話を基にした作品です。殺人鬼の話。舞台はメインがタイ(バンコクチェンマイなど)、カトマンズ、香港、ボンベイ、デリー、カラチ、パリなど目まぐるしいです。その都度、その当時に実写フィルムを随所に使って現地の雰囲気を巧みに醸し出しています。

主人公は天才的な詐欺師で殺人鬼の自称宝石商。確かに宝石の売買が金儲けの柱にはなっています。殺人とそれによる盗み(現金、宝石類)、投獄、脱獄を繰り返します。インド人とベトナム人を親に持つのですが、フランスないし、フランス語が話されるベトナムで幼少時を過ごすので、英仏語が母国語です。

この役を演じるタハール・ラヒムが上手いです。彼はパリで生まれ育っていますが、名前と顔つきから判断するに、明らかに中東系で、この役にはぴったり。

インドで彼と運命的出会いをして相思相愛となり、その後、殺人などの重犯罪の共犯となる女性が登場します。これまたいろんな名前を彼の指示で使い分けます。演じるのは英国人のジェナ・コールマン(彼女の出演作は見たことはありません。)です。かなり小柄ですが、なかなか魅力があります。彼女、仏語は全くダメなので本作のために耳からの特訓をしたとか。

他方、彼の犯行をたまたま知ったタイのオランダ大使館勤務の参事官が大活躍します。ある程度の資料を収集してタイ警察に捜査依頼をしますが、まとも取り合ってもらえず、ならばとなんと自身で捜査しようとします。妻も当初は極めて協力的なのですが、男があまりにものめり込むので次第に距離を置き、最終的には離婚に至ったのは大いに同情します。

確かに大使にも再三注意されます。「お前の仕事じゃないだろう。参事官としての本来の仕事をやれ!」と言われ続けて何年も経過するというのも、どっちもすごいです。ちょっと考えられないです。上司の命令を無視して業務外のことに没頭するのですから。

その間にも、殺人鬼の犠牲者がどんどん増えていきます。手口は単純で、金がありそうと見込んだ、主にカップルに親切そうに近づき、最終的に毒殺ということです。警察の捜査網が手薄なアジア諸国で犯行を繰り返すのは絶対に捕まらないという自信があったんでしょう。

本物はまだどこかに収監されているはずです。彼女の方は子宮がんで刑期を早めて釈放され、故郷のカナダで亡くなったとエンドロールに出てきます。

どうでもいいことですが、この作品で登場人物の吸うタバコの量が半端ないです。誰もが常にスパスパ、あの時代ってそんなだったかなあと思ったほど。ヘアスタイル、コスチューム、車、ラジカセなど小物に至るまでよく研究して当時色を濃くだしています。最後まで面白く見られました。