ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「セビリアの理髪師」@日生劇場

220611

観劇したのは左側のチームです。

チケットは売り出し当日に買ってあったので、前から2列目の左セクション右端という、自分としてはベストポジションで観られました。

いや、まあ幸せな3時間でした。いつもメトライブビューイングで見るメトロポリタン歌劇場の公演を絶賛していますが、日本でもこれだけ完成度の高いセビリアが見られたことに感動しました。なんども見たオペラですが、今回ほどしびれたことはありませんでした。誇張抜きで。もう、なにもかもが最高レベルに達していたと思います。

また、これほどオペラで笑ったことも稀です。演出の妙でしょうね。あまりに絶賛に次ぐ絶賛でっすが、とりあえずソリスト陣から・・・。

タイトルロールの須藤慎吾さん、多分10年以上前から注目しているバリトンですが、いまやまさに円熟に到達しつつありますね。どこをとっても、一流です。

アルマヴィーヴァ伯爵の中井亮一さんも、以前からずーっと気になるテノーレ・レッジェーロで、ロッシーニ歌いの極地でしょうか。終演部の長い長いアジリタには陶酔し、気が遠くなるほどの感慨を味わいました。しかも、第1幕第1場のリンドーロに扮した伯爵がギター片手に"Se il mio nome saper voi bramate♪♪♪と歌う「名乗りの歌」、なんと本人の弾き語りですからねぇ、いやはや・・・。

メッゾの富岡明子さんも10年以上まえからずーっとフォローしていて、いつもうまいなあと感心するばかり。今日はうまさに加え美しかったです。

バルトロの黒田博さんは、もはや大御所の域ですから、いまさら何をか言わんやというところ。歌はもちろんのこと、芸のうまさがほんと、光りました。この味はなかなかだせませんから、やはりそこは経験ですかね。

ドン・バジリオの伊藤貴之さん、私の好きなバス・バリトンです。メイクもあり、登場した瞬間はアレ、誰だっけ、この人?って反応で申し訳なかったのですが、声を聴いて納得でした。La Clunniaはゼッピンでした。この歌は今は亡きニコラ・ロッシ・レメーニのおはこで、1963年来日時の彼の歌声も演技も目と耳に焼き付いていますが、伊藤さんのも負けずに素晴らしかった!

女中ベルタは種谷典子さん。コロナ禍直前の大田区の公演「こうもり」短縮版で同じ舞台に乗れた愚亭としては、今回、大いに気になる存在でした。ロッシーニはちゃんとベルタにも出番を用意しており、終幕近くに彼女が一人で堂々とアリアを歌う場面が、そりゃ素晴らしかった!周りはみんな海千山千のベテランばかりなので、練習から緊張の連続だったろうと勝手に想像しますが、臆することなく、見事な演唱で、Bravissima!!

回り舞台を使った演出の凄かったこと。周りながら、それも急傾斜な階段の上で演技しながら歌うって、どんだけアクロバティックなことやらしてんだろうと思いましたよ。他に、美術、照明、衣装、いずれも冴え渡っていました。

合唱もフリが多くて大変だったと思いますが、さすが粒ぞろいのヴィレッジ・シンガーズ、演技も含めて大いに堪能いたしました。歌うところはマスク、演技だけの時はマスクを外していました。

エストロ沼尻に率いられた東響の演奏も至福の空間を編み出していて、レチタティーヴォの多い演目だけに、チェンバロが大活躍。ピットの左端に陣取っていて、もちろん演奏する姿は見えませんでしたが、当然舞台上からも客席からも盛大な拍手を送られていました。

卓上に置いてあった消毒液も活躍していましたし、最後、すべてうまくいって、フィガロとアルマヴィーヴァが握手しようとして、肘を交差させるシーンも笑いを取りました。

やはり歌よし、演技よしのソリストをずらりと揃えたキャスティングの勝利でしょうか。ああ、ロッシーニは楽しい!つくづく。

以下、日生劇場さんからお借りした画像をいくつか。

前述の回りながら階段で演唱する3人

フィガロがバルトロの髭をあたった後のふざけシーン。これは笑えた。

女中ベルタも加わり六重唱

音楽教師バジリオをみんなで追い出すシーン Buona sera, buona sera

「速く、速く!」と急かすフィガロ

終演部の七重唱