ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「コーダ あいのうた」@Amazon Prime Video

220805 CODA 米・仏・加合作  1時間51分 脚本・監督:シアン・ヘダー

アカデミー作品賞を取った作品なのでこんなに早く配信してくれてラッキーです。監督賞取れず作品賞を取ったという作品て、長いアカデミーの歴史でもきわめて珍しいそうです。でも、シアン・ヘダーさん、脚本賞取れたから、よかったです。他に助演男優賞をお父さん役のトロイ・コッツァさんが取りました。

これは2014年のフランス映画「エール!」を、舞台はアメリカ東部に移し、また家族の商売を酪農業から漁業に移し替えたものです。ちなみに「エール!」は未見ですが、この後に見る予定です。

CODAというと、私などはすぐに音楽用語を思い浮かべますが、ま、それにも引っ掛けているのでしょうが、元の意味はChildren of Deaf Adultsの略称だとか。聾者から生まれた健聴者ということで、本作の主人公ルビー(エミリア・ジョーンズ)がまさにそれです。

両親と兄、つまり自分以外の家族全員が聾者なんで、生まれた時から家族のための通訳という立場で育ちます。そのために自分の趣味とか進みたい道とか犠牲にしようと、幼いなりに覚悟している様子が切ないです。それにしても明るく伸び伸びそだったものです。

でも、学校で彼女の音楽の才能を見抜いた音楽教師から歌の道に進むことを助言されます。ここから、彼女の心は揺れに揺れます。もちろん家族、特に両親の悩みは深いです。第一、彼女の歌がうまいのかどうか、聞いたことがない、聞くことができないのですから、安易に賛成できないわけです。1人お兄ちゃんだけは、違います。

オーディションでの彼女の歌声、素直で澄んだ歌声が印象に残ります。歌ったのはBoth Sides Now、日本語では「青春の光と影」という訳があります。古くはイギリス人歌手シーラ・ブラックが歌い日本でもヒットした歌です。

ちなみに、エミリア・ジョーンズは歌、手話の特訓を8ヶ月にわたって受けたということですが、縁起の中に見事に結実しています。また、冒頭シーン、船上での網の巻き取りから魚介類を素早く選別処理する作業も堂に入ったものでした。ちょっと見ではそれほどと思っていたのに、映画が進むにつれ、この女優の持つ魅力がどんどん輝いていきます。

また、聾者の家族3人を演じる俳優はすべて実際に聾者だそうで、やはりそうでないと自然な演技は難しいのかと思いましたが、エミリアの手話も彼らにまったく見劣りしないものでした。(実際の聾者が見れば違うのかも知れませんが・・・)

エンディングもすばらしく、見終わって久しぶりに感動を覚えました。