ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「エール!」@Amazon Prime Video

220806 LA FAMILLE BÉLIER (ベリエ家)仏 1時間46分 脚本:監督:エリック・ラルティゴ

こちらが「コーダ あいのうた」の元となったフランス映画。パリ近郊で酪農を営むベリエ一家、娘のポーラ(ルアーヌ・エメラ)以外の家族、つまり両親と弟は生まれつきの聾者という設定。舞台と一家の職業、そして兄でなく弟というところがコーダとの相違点で、ストーリーはほぼ一緒です。ま、当然ですが。

ただ、見る順番が逆だったらどうか分かりませんが、愚亭にはリメイクの方が出来がよいように思われました。脚本の差なのかと思われます。(現に、コーダは脚本でもアカデミー賞を取っています)

一例を挙げれば、もっとも感動的な場面となるはずの、登竜門と言えるオーディション。コーダでは家族の入場は認められず、父親の機転でこっそり2階席へ。

一方、本作では最初から家族はホール側の許可を得て2階に陣取ります。そして歌い始め、途中から家族のために手話を交え、そこが感動を呼ぶという展開。

コーダの主人公にしてみれば、いないはずの家族が遠くに見えたので、あっ、それなら手話を入れちゃおう!となるのに、本作のように初めから家族の存在を認識していれば、手話入りの歌唱が咄嗟の判断とはならないのではないか、ちょっとしたことですが、ここは大きな違いに見えました。その分、感動が薄味になったことは否めません。

フランス国内での映画賞、セザール賞こそ何部門かで賞を取りましたが、国際的な賞はなし。確かに、アカデミー賞アメリカの作品にすれば国内賞ではあるのですが、違いは歴然ですよね。

別に本作にケチをつけるつもりは毛頭なく、これはこれでよく出来ていたと思いますし、なんたってこっちがオリジナルなんで、その重みがあることは認めます。

ちなみに、役者で実際に聾者だったのは弟だけ。両親は共に健聴者です。このため、フランスの聾者団体からクレームが来たらしいですよ、「なんで聾者の俳優を使わなかったのか?」と。そういうことを知ってたせいか分かりませんが、アメリカ版では家族全員、聾者を起用しています。

あ、それからオーディションで歌った歌、コーダではジュディ・コリンズやシーラ・ブラックでヒットしたBOTH SIDES NOW(青春の光と影)で、本作ではミシェル・サルドゥのLA MALADIE D'AMOUR(恋の病)でした。