220809 IL PORTIERE DI NOTTE (夜勤ポーター)イタリア 1975年、1時間58分
原作・脚本・監督:リリアーナ・カヴァーニ (1933年、エミリアロマーニャ生まれ)
かなりの衝撃作ですが、リアルタイムでは見ていません、というか、公開されたことすら記憶にありません。幸い、アマゾンで有料配信があったので、見られました。先日、イギリスの配信作でシャーロット・ランプリングさんの現在の姿を見たばかりで、彼女の若い頃の代表作の一つとして見ようと思っていた作品です。
さすが耀くばかりの美しさでしたね。この時、真冬のウィーンでの撮影で、4ヶ月の乳飲み子を抱えていて、撮影の合間、我が子のケアが大変だったとか。
共演者はダーク・ボガードと、同じくイギリス人。この人の本名は、実にSir Derek Jules Gaspard Ulric Niven van den Bogaerdeというもので、スペリングでも明らかなように生粋のイギリス人ではありません。父親はオランダ人ジャーナリスト、母親はイギリス人女優という家庭に育ちました。
本作を最後に引退予告していたそうです。この時、まだ53ですから、引退するような高齢ではありません。考えるところがあったのか、体調不良か。結局すぐに引退することもなく、この後は3年後に「遠い橋」という戦争映画に出ただけで、その後は大した作品にも出ないまま99年に78で亡くなっています。
時代は1957年、舞台はウィーンです。元親衛隊員だったマックス(ボガード)は身分を隠してオペラ座近くの二ツ星ホテルの支配人をやったいます。ある日、オペラ座公演終了後、楽団員やファンがロビーへ。その中に、アッと驚く顔が。
妖気と狂気をはらんだ展開です。元SS隊員マックス(ボガード)は絶滅収容所で囚われの身となっていたユダヤ人少女をさんざん弄んだ過去を持ちます。2人の思わぬ再会から倒錯する愛へ、さらに破滅的な道行きが、ねちっとしたメランコリックな旋律に乗せて描かれます。
とりわけランプリングの演技が何と言っても本作の目玉でしょうか。いろんな役柄をさまざまな国の映画で演じ分けているランプリングですが、この役柄は特筆すべきものだと思います。期待していた以上の作品でした。