221226 The Outpost (前哨基地)米 2019 2h3m 監督:ロッド・ルーリー 製作に6人、製作総指揮に実に10人が名を連ねています。どんだけの作品かと言うことでしょう。出演者では、クリント・イーストウッドの息子、スコット・イーストウッド、オーランド・ブルーム(前半で姿を消してしまうのがもったいない!)以外は知らない名前です。
これまで随分戦争映画を見てきましたが、戦闘シーンの苛烈さにおいては、本作はトップクラスだと思います。いったいどうやって撮影したのか不可解なほどの迫真の撮影でした。
もちろん手持ちカメラを多用して臨場感を出したのは間違いないのですが、それ以外にもいろいろ最新のテクニックを駆使したことでしょう。それに応えた俳優陣も立派だし、出演者の中にはこの無謀な作戦に実際参加した兵士も何人かいたようです。あの時に死に別れた仲間たちをそばで俳優が演じていて、妙な感じがしたと同時に懐かしくもあり嬉しい気持ちと、複雑な感情をエンドロールで語っていたのが印象的でした。
”カムデッシュの戦い”と呼ばれ、実際に起きたことです。2009年10月、舞台はアフガニスタンの山岳地帯、周囲を小高い山に囲まれた谷底のようなところに問題の前哨基地が設営されています。ちょうどすり鉢の底のような場所です。もともとは地元民との交流や情報把握に使用していたものを時代が変わり、基地に転用したらしいです。この地勢では、敵であるタリバンが押し寄せてきたら、持ち堪えるのはかなり難しいだろうというのは、素人の目にも明らかです。
前半は割と淡々と進行していき、正直眠くなりますが、後半は一気に激しい戦闘シーンへ突入。正視に耐えかねる場面も少なからず、女性には勧められない作品です。
通訳として米軍に雇われているモハメッドと称する現地人が自分が得た情報で、まもなくタリバンが大挙して攻めてくると上層部に報告します。が、空振り。こうしたことが数回起きて、誰も彼を信用しなくなります。これがまさにオオカミ少年的な展開で、誰も信用しなくなった時に、それが起きるのです。
圧倒的に劣勢に立たされ、さっそく援軍を要請しますが、しばらくは持ち堪えるしかありませんが、20~23歳ほどの若い兵士を何人も亡くすことになります。これは間違いなく責任問題に発展します。だって、誰が見ても危険極まりない陣地ですから、山上から本気で攻め立てられたら、近代装備の米軍といえども、持ち堪えられないことは一目瞭然です。300vs.53ですからね。
そして恐れていた事態となりますが、ぎりぎりでヘリや航空機が飛来して、敵を一掃、辛くも勝利(?)しますが、はっきりとこの作戦は大失敗。この前哨基地は閉鎖され、幕となります。
こういう作品を見るにつけ、虚しさだけが残ります。自国兵をほぼ犬死にさせ、挙げ句の果てに、この11年後、タリバンは政権についてしまうのですから。もはや、アメリカが”世界の警察”の看板を自ら下ろすのは当然の帰結でしょう。