ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「キーパー ある兵士の奇跡」@Amazon Prime

230304 TRAUTMANN (主人公の実名)2018 英独 119分 監督:マルクス・ローゼンミュラー

実話を元にした作品。目の前で起きた悪夢、それは上官がユダヤ人の子供を遊び半分でまるで犬猫のように弄び銃殺したこと。打ち消しても打ち消しても決して消えることのない映像、彼は発砲直前に上官を突き飛ばし、今度は銃口が自分に向けられた悪夢に無意識にすり替えます。

今はスコットランドの捕虜収容所に抑留され、過酷な肉体労働に従事しています。とは言え、非人道的な扱いを受けることはありません。休憩時間には仲間とサッカーに興じることもできます。彼はキーパーとして目覚ましい技を持っています。やがてそれが彼の運命を大きく変えることになるとは!

地元サッカーチームの監督の目に留まり、チームに引き抜かれます。当然、この間まで戦争をしていた相手ですから、同僚からもファンからも散々目の敵にされますが、彼のおかげで連勝を重ね、周囲の見る目が変わり、監督の娘からも大いに関心を持たれるという幸運まで。

やがて名門のマンチェスター・シティーにスカウトされ、一気に人気も上がるのですが、同時に反感も買い続けます。最終的に、地元のラビがユダヤ人としての公式見解として恨みは持たないと発表したことで、やっと人々からも受け入れられ、地元チームの監督の娘とも結婚、息子も生まれ、すべて順風満帆に見えますが・・・好事魔多し

敵同士と言っても、例えば日米のような場合、そもそも人種からして違うわけですから、独仏とか英独などとは比べようのない憎悪を生むことが少なくないのです。英独の場合は、現在の英王室はウィンザー朝ですが、少し前まではハノーヴァー朝、すなわちドイツ出身だったわけです。そんなこともあり、確かに爆撃を受けて甚大な被害を被ったとは言え、底流ではあい通じるところがある訳です。英仏、独仏もまたしかり。

ロシアまで含めて当時の王室は互いに婚姻を通じて家同士が親戚だったわけですから、憎悪の程度もそれほどではなかったと言えるのではないでしょうかね。

映画の終わり頃、我が子の墓参に来た主人公の横にかつて捕虜収容所で散々痛ぶられた英国軍士官の姿が。彼もまたドイツ軍爆撃で亡くなった家族の墓に詣でたところ、偶然そばだったという設定です。ちょっとした言葉のやりとりが元で殴り合いい。その後、曹長がポケットから取り出して、彼に投げ与えたもの、それこそナチの上官が撃ち殺したユダヤ少年のもっていたものでした。この幕切れ、ちょっと切ないです。