ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「シチリアの晩鐘」by アーリドラーテ歌劇団@新国立劇場中劇場

240622

これは愚亭の中高時代の後輩にあたるMo.山島がライフワークとして取り組んでいるヴェルディ・シリーズの記念すべき第10回の公演です。愚亭は6回目の「ナブッコ」から観に行っています。彼は弁護士との二足の草鞋を履いていて、公演収支の赤字を自ら補填しながら続けていて、頭が下がります。

昨日の公演は見る限り客席は9割がた埋まっていましたが、どうなんでしょうか。赤字幅が縮小することを祈るばかりです。

いつものように、開幕前にマエストロが出てきて挨拶かたがた、演目の解説をしてくれます。さらに今回は、わかりにくい人物相関関係に加え当時のシチリアの情勢をすこしでも理解してもらうために、プログラムに以下のような工夫をされていました。

幕ごとにアニメで内容が紹介されていました。これはアイディアですね。

さて、このオペラ、初見です。YouTube等でも観たこと、ありません。アリアも、ほぼ聞いたことはないと思います。上演回数の少ない作品なので、無理からぬことです。そもそも13世紀末の実際に起きたシチリアでの騒乱を扱っているので、暗い内容ですし、ヴェルディの全28のオペラの中で20番目という、ラ・トラヴィアータの後、シモン・ボッカネーグラの前に作られた作品にしては、かなり地味という印象です。

しかし、それでも後半、にわかに主要キャストの名アリアや重唱が続々と出てまいります。ただ、こうしたアリアや重唱がコンサートで単独で取り上げられる機会がほとんどないのは、いかがなもんでしょうか、自問してしまいます。

他に合唱の出番が多いのも本作の特徴でしょうか。全ソリストと合唱が一体になっての歌唱など、聞き応えたっぷりでした。ただ、長すぎます。優に3時間を超えるのに加えて30分ほどのバレエも挿入されているので、バレエ好きには堪えられないでしょうけど、そうでないとちょっとねぇ。

ソリストも合唱もよくこれだけ長い楽曲を暗譜したものと感嘆いたします。練習も大変だったことでしょう。

ソリスト陣、みなさん、大熱演でしたが、中でもエレナ役の石上朋美さんの卓抜せる演唱は特筆に値いします。一番館内狭しと響き渡っていましたし、それも最後まで持続させた技は見事としか言えません。

舞台デザインは、いつもながらの低予算でよく工夫されていました。今回は大きな雲の塊をいくつも上から吊るして自在に位置を調整しながら、それらに場面場面でさまざまな色を照明して雰囲気を盛り上げていました。

また終幕は、なんの変哲もない幕が一気に取り去られると、シチリア人が一斉に手前にいるフランス兵その他を殺傷する展開で、すばらしい幕切れでした。