240805 MR. JONES ポーランド・英国・ウクライナ 2h21m 監督:アグニエシュカ・ホランド(1948年生まれ ポーランド人女性)
ある程度は自分の中で想像はしていたけど・・・まさか、まさか、これが現実とは!世界を震撼させるに違いないこの真実、自分が世界に発信しないで、誰が!
そんな思いで、奇跡的に母国英国にたどり着いたガレス・ジョーンズ(ジェームス・ノートン)、1931年、ソ連がひた隠しにしていた驚嘆すべき実情を署名なしでザ・タイムズに投稿、さらに今度は実名入りで詳細な現地リポートをベルリンでプレス・リリースします。あまりにも大胆!まさに命懸けです。
もともとロイド・ジョージ首相の外交顧問のような仕事していました。それというのも、なんとナチスが政権を取ったとった直後、ヒトラーの搭乗したドイツの最新式軍用機に同乗し、単独でヒトラーやゲッベルスにインタビューするという快挙をなしとげていたという実績があったからです。
まだ二十代の記者がよくそんなことができたと思います。かなり強運の持ち主だったのでしょう。そんな若きジョーンズが、次に興味を持ったのがスターリンでした。世界恐慌の中で着々と経済成長を遂げるソ連、その謎に迫るため、スターリンに面会しようと動きます。
さすがに今度はそう簡単には行きません。相手は共産国ですから!正義感にあふれた若きジャーナリストですが、あまりにナイーブでもありました。実は成長どころか、ソ連国内は大飢饉だったのです。それが典型的に現れたのがウクライナ!
そこの穀物はスターリンの命令で片端から首都モスクワへ移され、ウクライナの民は窮乏の一途。飼っていた家畜も片端から食用にするほどで、その最中に、ツテを頼ってジョーンズはウクライナ、それも地方へ入り、実情をつぶさに見てまわります。
後にホロモドールと呼ばれることになる一種のジェノサイドで、この時飢餓で亡くなった人は500万から1千万人とも言われています。なんとヒトラーのホロコーストの600万に匹敵するかそれ以上の虐殺です。
この恐るべき事実を世界に発信したわけですから、彼がいかにその若さでだいそれたことを成し遂げたのか、もっと世界は知るべきでした。その後、彼は日本にも6週間も滞在し、時の政府関係者にもインタビューしていたことを、少なくとも愚亭は知りませんでした。
そして、日本から北京へ、さらに内モンゴルへ。彼が30歳の誕生日を迎える前日に、ソ連の命を受けた現地ガイドにより射殺されるという、実に壮絶な、そして短い人生でした。
遅まきながら、彼の業績を顕彰する碑がウクライナ、母国ウェールズのバリーに設置されているようです。
ジョーンズを演じた2枚目俳優、ジェームス・ノートン、好演です。またちょい役で、多分架空の人物と思われる記者仲間の一人として登場するエイダ役をヴァネッサ・カービー、そして時のソ連政府に協力的でなにかとジョーンズを批判していたアメリカ人ジャーナリスト、ウォルター・デュランティをピーター・サースガードが演じました。