240926 ヴェルディの最も代表的なグランド・オペラですが、実は初見!
そもそも上演される機会が少ないからです。それは、愚亭が最も好きな「イル・トロヴァトーレ」よりも、さらにキャストを揃えることが至難であることだと思われます。主役のレオノーラが演じられる歌手、滅多にいません。トゥーランドット姫並みかそれ以上にソプラノ・ドランマティコである必要があります。
それになんたって正味3時間にせまる長大さですからねぇ。歌唱力、演技力、体力、舞台映えとなると、なまじの歌手には務まりません。日本で、この人なら、というこの役のはまり役は・・・?
おおよその筋書きは、以下、公式HPから抜粋します。
18世紀半ば(本演出では戦時下の現代)。ヴァルガス家の令嬢レオノーラは敵方のドン・アルヴァーロと恋に落ち、駆け落ちを計画するが、父に見つかってしまう。揉み合ううちにアルヴァーロの鉄砲が暴発し、父は絶命。
恋人たちは逃避行の途中で離れ離れになり、レオノーラは修道院の奥の洞窟に身を隠し、アルヴァーロは軍隊に入る。レオノーラの兄ドン・カルロは、父の仇として二人を追う。カルロとの決闘を逃れたアルヴァーロは修道院に入るが、そこはなんとレオノーラが隠れ住む場所でもあった。カルロに追い詰められた恋人たちはついに再会を果たすが…。text by 加藤浩子
ということで、それほど難解でもありませんし、むしろ単純明快。それでこの長さですから、何度かスピンアウト的展開が含まれています。それで暗すぎないようにしているのかも知れません。グランド・オペラには相関図が込み入っているものが多い中では、この長さでこの筋書きというのは例外的かも知れません。
今回の上演では現代に置き換えられていますが、違和感はほぼありませんでした。
さて、主要キャストですが、まずはリーゼ・ダヴィッドソンの圧倒的な演唱がすべてと言ってよいでしょう。テノールのアメリカ人、ブライアン・ジェイド、バリトンのロシア人、イーゴル・ゴロヴァテンコも好演していましたが。
ノールウェイ出身のオペラ歌手というのは、ほぼ知りません。お隣のスェーデンは、ビルギット・ニルセンとか、大昔のテノール、ユッシ・ビョルリンクなどが知られていますが・・・。大柄(多分、180cmほど)で、気品のある顔立ちですから、これほど舞台映えするプリマも滅多にいないでしょう。
有名な序曲が始まると、すぐにこんな風に登場し、一気に持っていかれる感じです。これは豪華ホテルの正面玄関という設定。中は、彼女の誕生日の祝いの席、父親のスピーチがあるのですが、上の空。無理もありません、これから恋人であるアルヴァーロと駆け落ちしようとしているわけですから。
アルヴァーロと離れ離れになり、しかも高速道路での事故でどんどん運から見放されていくレオノーラ。
やっとたどり着いた僧院で神父に必死の思いで頼み込んで裏の洞山に住まいを得ます。↑は、修道士全員が儀式として彼女をシュロの小枝で鞭打つ場面。この男声合唱の素晴らしいこと!
例によって、合間合間にインタビューや稽古(今回は合唱)の様子などが紹介されます。インタビュアーは、なんとあのネイディーン・シエラ!最近、ジュリエットで見たばかりで、まだ余韻が残っています。