240930 BONNARD、PIERRE ET MARTH 仏 2023 2h05m 脚本・監督:マルタン・プロヴォ
ピエール・ボナールは好きな画家の1人です。色使いと画面構成に魅了されます。ポスト印象派、ナビ派(ヘブライ語で預言者)でアンティミスト(親密派)にも分類されます。
映画は、パリの屋根裏部屋と思しき一室で壁に向かって絵画制作に夢中のピエール、そしてモデルとなっているマルトが映し出されるところから始まります。ピエールは単なるモデルとしかマルトを見てませんし、マルトの方もへっぽこ絵描きがえらそうにあれこれ指図しやがって、とやや見下し気味。でも、しばらくするとトンデモな方向へと2人の関係は発展していきます。
こうして、深い関係となった2人はその後、セーヌ川沿いの古民家を手に入れ、自由奔放な生活を享受、また画家仲間(モネも含まれています)との交流があたかも印象派絵画のような美しい風景の中にくりひろげられます。
このままであれば、めでたし、めでたしですが、途中からアメリカ出身の若い娘、ルネがモデルとして登場、2人の関係に暗雲が。ピエールは完全にルネのとりこになって、彼女を追いかけてローマまで行ってしまいます。
当然深く傷ついたマルト、自暴自棄になりながらも、ピエールのアトリエで絵を描き始めます。稚拙ながらも、どこか味わいのある絵はやがて評判になり、個展開催にまで至るのですが、このへんは創作のようです。
出会った時にマルト・ド・メリニーと、なんだか貴族風な名前でイタリア系と名乗って、ピエールも無頓着ですから、気にもかけなかったようですが、これは完全なる偽名で、本名はマリア・ブールサンという下層階級の娘でした。
それでも健気にピエールを待ち続けたおかげで、ピエールが戻ります。でも、その裏ではルネがローマで自殺するわけで、罪作りなピエールです。マルトとは実に知り合って30年も経って結婚、これを機に南仏のル・カネ(カンヌ近郊)に新居を構え、一層制作活動に熱中します。
南仏の雰囲気を目一杯取り入れた作品を次々に生み出します。同時にマルトを描いた作品も増えていきます。(生涯制作数2,000、うち1/3はマルトが登場!!)マルトは病気療養のこともあり、大の入浴好きで、そのシーンも絵画に何度も登場します。
そして素晴らしいエンディングでした。2時間を超える長尺ですが、まったく気にならないほど画面に没入しました。ずーっとバロック風の弦の調べと通奏低音が鳴っていました。
マルトを演じたセシール・ドゥ・フランス、大層なお名前ですが、実はベルギー人。31歳の時の主演映画「モンテーニュ通りのカフェ」(2006)では、初々しく可愛らしかったのですがねぇ、4年後の「ヒヤアフター」では、大津波から逃げおおせる一家の主婦役でしたが、えらくたくましい姿に変身。さらに本作では、まだ49ですが、うーん、かなりお年を召したって感じでした。
予想外の力作でした。
以下に有名な作品を何点か。
奥はLe Canetから見える地中海、手前はりんごを持つマルト
湯浴みをした後のマルト
猫とマルト