ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ピーア・デ・トロメイ」@日生劇場

241122 かのドニゼッティの全盛期の作品ながら、世界でも上演機会の少ないオペラのようで、当然日本でも滅多に。上演時間は休憩含めて2時間半とごく一般的でしたし、メイン・キャストも多くはないのに、なぜ上演される機会が少ないのか分かりません。

初日組に行きました。

確かに傑出した名アリアがないのかも知れませんが、それなりに素敵なアリアも重唱もふんだんに出てくると言うのに、滅多に上演されないのは謎としか思えません。

筋立てが多少込み入っている、というか中世の、今でいう中部イタリアを中心に皇帝派、教皇派が激しく争っていた時代設定ですから、我々日本人には馴染み薄いのは事実です。でも、そんな時代設定のオペラの名作はいくらでもあるので、それが理由とも思えません。

ともあれ、幕が上がりました。美術は前回ここで見たばかりの「連隊の娘」と同じイタロ・グラッシが担当しています。打って変わって、シンプルかつスタイリッシュな舞台デザインです。上手側はマレンマ地方の野っ原、左側が城内という設定のようです。照明と紗幕を効果的に使っていました。

全体の印象では、Il Trovatoreの小型版というイメージと思えば分かりやすいでしょうかね。主役のピーアを演じた伊藤 晴さん、すでに6月に当劇場ロビーで行われたピロティ・コンサートでほんの一部はお聞きしていましたが、期待通りの出来栄えでした。高音も美しくのびのびと響きました。

相手役のネッロを演じた井出壮志朗さん、以前にも書いていますが、デビュー当時からなんどか聞く機会がありましたが、著しい成長ぶりを目の当たりにしました。一方、恋敵というのでしょうか、ギーノを演じたヴェテランの藤田卓也さん、久しぶりに聞かせていただきました。演技も含めて大変パワフルでした。

そしてピーアの弟、ロドリーゴ役の星 由佳子さん、何度もこのサイトに登場していますが、本格的なオペラでの役は今回が初めてでしょうか。とてもそのようには見えないほど落ち着いた演技で、またズボン役ですから、当然低い音域も出すし、メゾということで、高音域も要求されるわけで、未経験の分野での苦労はいかばかりかと。日本人離れした長身、舞台映えする容姿もあり、存在感は抜群でした。

藤原歌劇団創立90周年という鳴物入りの公演ですから、幹部が総動員でVIP客の対応に追われているようでした。

初日・楽日の組と中日の組のダブルキャストですので、今回もまた両組を見たい衝動に駆られましたが、なんとかその衝動は抑え切りました。(笑)

駅へ向かう途中がこんな風になっていました。