ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ヒッチコック」

130405 原題もHITCHCOCK 米 99分 [監]サーシャ・ガヴァシ(監督としての第一作)いつもひょうひょうとしてとぼけた感じの男だが、案外小心で神経質だったのかも知れない。そんな感じを、特殊メークのアンソニー・ホプキンスが見事に演じる。彼も英国人だから、演技はし易かったのかも知れないが、とりわけしゃべり方はよく似せてあった。

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北北西に進路を取れ」の成功で気を良くしたヒッチ(奥さんも含め周囲の人は、彼をファーストネームで呼ばず、こう呼んでいたようだし、本人もこれが気に入っていたらしい)は、いよいよ次回作として「サイコ」に照準を絞る。しかし、一番信頼している脚本家でもある奥さんのアルマ(ヘレン・ミレン)が乗り気ではなく、また当時の世相では、映倫がこの手のおぞましい事件を扱うのを快く思わないだろうという、両面で波乱含み。

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そこで、アルマの意見を大幅に取り入れることに。彼がもともと金髪美人大好き人間で、とりわけグレース・ケリーにはぞっこんだったのは有名な話。そういう亭主の嗜好を知り尽くしているアルマは、マリオン役にはジャネット・リースカーレット・ヨハンソン)を推す。他にもプロット上でも、少なからざるをアイディアをアルマが実は提供していることを、映画は淡々と描いていく。うーむ、そういうことか、なるほど・・・。

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一方難物の映倫の方も、殺人場面を当初のものとは、残虐性を弱めることでなんとか、クリア。アンソニー・パーキンスやヴェラ・マイルズ(ジェシカ・ビール⬆)などのキャスティングも決まり、撮影に入ろうとしたら、今度は本作の成功を危ぶむ配給会社が難色を示すという具合で次々と問題が持ち上がる。自宅を担保にして資金面での問題も片付け、やっと撮影開始となる。

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 「サイコ」の内容については、たとえ家族にも一切漏らさないことを宣誓させられるキャスト・スタッフ陣。こんなこと、実際にやったのか知らん。

 

舞台裏に、実は山ほど障害物があることを一般客は知る由もないし、こうしたことの一つ一つが実に新鮮で興味深く見られた。彼のああいう外観からは計り知れない悩みや葛藤の日々で、それこそ眠れない夜の連続であったとは!しかも、これに追い打ちをかけるように、頼りにしているアルマが撮影中に、日頃から仲のよい脚本家ウィットと、別の作品の共同執筆に夢中になるというオマケまで。

 

紆余曲折を経ながらも、大方の予想を裏切って、大成功!!さて、次回作品は?そこへ大きなカラスが彼の肩へ止まったかと思うと、またどこかへ。クレジットが流れた後に余韻を残すかのごとく、あの巨体が再び。あー、面白かった!

 

#26 画像はALLCINEMA on line