ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アギーレ/神の怒り」

131210 原題:AGUIRRE, DER ZORN GOTTES 西独 931972年 [監][脚][製]ヴェルナー・ヘルツォーク [出]クラウス・キンスキー

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マヤ文明はコルテスに、そしてインカ文明はピサロに滅ぼされた後の南米、アマゾン奥地が舞台。

 

伝説のエル・ドラード(黄金郷)を目指すスペインの分遣隊。ペルーの高山地帯からジャングルのアマゾンへと、峻険な道無き道を、大砲、家畜、馬などと共に上り下り、難渋を極める冒頭の俯瞰ショットが素晴らしい!

 

筏を組んで川を下るが、目指す黄金郷はどこにも。ついに戻る決断をする上官、これに従わず、更に奥地を目指す副官のアギーレ。いつの間にか、狂気に支配され、服従しない部下を情け容赦なく切り捨て、最後は先住民の矢で次々に部下を射殺され、まるで「メデューサ号の筏」(テオドール・ジェリコ)のごとき惨状となった筏の上は、見る見る小猿の群れに占領される。

 

そして、独り神になったつもりのアギーレがつぶやく「新帝国を築くんだ。俺こそが神の怒りだ!」最早うつろな彼の眼に映るのは幻の黄金郷か、はたまた・・・。

 

40年前の作品だが、斬新な映像作りに驚嘆あるのみ。コッポラの「地獄の黙示録」(1979)は、これを参考にしていなかっただろうか。ジャングルの奥地に理想郷を築こうとする狂気の元将軍に相通じる。

 

それにしても、主演、クラウス・キンスキーの怪演には圧倒される。話の内容からはスペイン語で聞きたかった。ドイツ語だったのが残念。ま、ドイツ映画だから仕方ないけど。

 

撮影は、どう見ても現地ロケを敢行していると思うが、これは映画史上でも稀なる厳しい撮影現場ではなかったろうか。女優も何人か登場するが、よく耐えたものと感服あるのみ。

 

 

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