170919 原題:DEMAIN TOUT COMMENCE(明日は何もかもが始まる)仏 117分 脚本・監督:ユーゴ・ジェラン おかしくて、時々ホロリとさせられる作品。
南仏、カランク(崖)の目立つ地域だから、多分コート・ダジュールよりプロヴァンスと思われるところが舞台。少年時代の主人公、サミュエルが父親から男なら飛んでみろと言われるが、足がすくんで動けない。それを横目に見て去って行く父親。なかなか洒落た伏線の張り方だ。
それから十数年後のサミュエル(オマール・シー)の前に、ある日、見知らぬ女、クリスティン(クレマンス・ポエジー、なんと素敵な名前!)が登場、「これあんたの子供、グロリアよ」と言って、乳幼児を残して立ち去る。慌てて、女を追いかけ、なんとロンドンへ。金もないし、ろくに英語も喋れないし、子供を抱いたまま途方に暮れる。
そこへ偶然居合わせたゲイのベルキー(アントワーヌ・ベルトラン)⬆︎が、サミュエルに気があったらしく、救いの手を差し伸べ、家も職も提供、男二人で子育て。
それから8年、すっかりおしゃまな娘に成長。そして、3人の前に突如現れるクリスティン、娘を返して欲しいと。まあ、この辺りはお定まりの図式。すっかりサミュエルに懐いてしまっているグロリアだが、母親も恋しい年頃。
スッタモンダの挙句、親権裁判で、勝ったサミュエルだったが、DNA鑑定でのドンデン。グロリアはクリスティンとニューヨークへ旅立つことに。だが、そこで再びのドンデン返し。まあ、ツッコミどころはいくらでもあるが、いちいちあげても詮ないことだし、得てして映画ってそんなもん。この際、それをあげつらうより、オマール・シーの破天荒で素晴らしい演技を楽しんだ方が得策。
途中、サミュエルとグロリア、二人で病院で診断を受け、医者から余命について重大なことを言われる場面が。てっきりサミュエルのことだと観客を騙していたが、実はグロリアのことだったとは!ちょっと悲しい幕切れだが、それを振り切るように、「グロリアはいつも俺の横にいるんだ。あしたはまた最高の1日のスタート!」(これがタイトルのDEMAIN TOUT COMMENCE)とサミュエルが晴れやかにつぶやくところで、-FIN-
ところで、この監督、ユーゴ・ジェランだが、あら懐かしや、ダニエル・ジェラン(1921-2002)のお孫さんだったとは!!!ダニエル・ジェランの代表作は、フランソワーズ・アルヌールとの共演や、劇中歌われたファドの女王、アマリア・ロドリゲスの「暗いはしけ」でも有名になった「過去を持つ愛情」(1954)
#64 画像はIMDbから