ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「大統領の料理人」

130909 久しぶりにカミさんと映画を見に行った。原題:LES SAVEURS DU PALAIS(官邸のお味)[監]クリスチャン・ヴァンサン、[出]カトリーヌ・フロ(「地上5cmの恋心」、「譜めくりの女」)

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料理人を扱った映画は、これまでも、殊にイタリア、アメリカ、フランスで随分作られていて、古くは「バヴェットの晩餐会」みたいな大傑作もあるが、この作品は仏大統領の専属料理人になった女性を主人公に据えたところが目新しい。しかも、ほぼ実話である。

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フォラグラ、キャビアなどと並ぶ珍味、トリュッフの産地であるペリゴールでちっぽけなレストランをやっているオルタンスのところへ、突如大統領官邸から連絡が入り、ミッテラン大統領の専属料理人になるよう要請される。嫌も応もない、難色を示す彼女の言い分など、まったく取り合ってもらえず、即、大統領官邸のあるパリのエリゼー宮(サントノレ街55番地)へ半ば強制的に連行されてしまう。

 

もともと度胸のいい彼女、腹を括って、彼女なりに一心に国家の要請に答えようと努力する。当然、周囲の嫌がらせ、妬み、そねみは尋常ではないが、そんなことはいちいち気にしてられない。ミッテランがとことん気に入ってくれる料理を提供するのみ。

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⬆ある晩、いい加減、この仕事に嫌気が差し始めた彼女の前に、突然ミッテランが入って来る。乞われるままにトリュッフの切り身をタルティーヌ・ブーレの上に贅沢に乗せて、最高級ワインと共に供する。ひとしきり料理の話で盛り上がる。大統領も悩みを抱え眠れぬ夜だった様子。なかなかいい場面だ。

だが、2年もしないうち、辞表を担当官に叩き付けてしまう、彼女に一体なにが?その後、南極料理人に応募、屈強な男どものいる基地で高給を取り、念願だったNZでのトリュフ三昧の生活を目指して南極を去って行くところでFIN。

 

開映と同時に南氷洋らしい暗い海と逆巻く波の画面、「???」予想もしない冒頭のシーンだ。洋上でカメラを回すオーストラリアのTVクルー。そう、4年後の世界からフラッシュバックして物語をスタートさせようという、よくあるパターンだ。しかし、このTVクルーの話はまったく不要。

 

それにしても、料理を作るシーンの素晴らしい撮影には、ほとんど涎が垂れそうなほど見入ってしまった。こういうのを見ると、今更ながら仏料理の奥深さの一端を改めて知る思い。こんな料理も毎日食べていれば、身体に悪いのは誰にも分かる理屈で、折角専属料理人を呼んでおいて、カロリー管理が厳しくなったからと、あれこれ彼女に注文をつけるって・・・そんなの初めっから分かってんだろうと、見ている方も腹立たしくなってくる。

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それに、大領領が彼女に相づちを打ったからと早合点して、金に糸目をつけず、産地直送方式で、片っ端から最高の食材を急行便で取り寄せちゃあ、そりゃ経理部門から文句がでないはずがないんでね、この辺り、随分粗っぽい話ではないか。

 

まぁ、その辺りのことは別にすれば、なかなか楽しめる作品で、笑のポイントも随所にあって、カミさんも久々に楽しんだ様子。よかった、よかった。終映後、近くのガレット屋でお昼。CAFE BREIZHは、本場ブルターニュに本店のある本格派ガレット・クレープ屋。丁度、入店したら、ZAZのBGMが流れていて、ご機嫌でシードルを飲んだ次第。

 

ところで、この邦題は失敗だろう。現に、余り女性客が入っていなかった。やはりここはフランスの香りを漂わせる工夫が必要だった。例えば「サントノレ通り55番地の女シェフ」とかナントカ。大統領の料理人では、どこの国か判別不能だからだ。

 

画像はIMdbから。

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