ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「海にかかる霧」

150504 原題:海霧 韓国 111分 製作:ポン・ジュノ、監督:シム・ソンボ(監督デビュー作)、脚本:ポン・ジュノ、シム・ソンボ

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この手の作品を作らせると、韓国映画ってつくづく素晴らしいと思わざるを得ない。実際に起きた事件をまず戯曲化、そして今回映画化されたもの。確かに舞台劇になりやすい要素がふんだんに。尤も全編、舞台は海に浮かぶ船だから、その感じを出せるかどうかがポイントだろうけど。

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不漁続きで行き詰まった船長カン・チョルジュ(キム・ユンソク)、昔の知り合いを訪ね、例のショーバイ、まだできるかと、ついに密航に手を出すことに。たっぷり前借りして船員全員に前金を支払い因果を含める。

事前に示し合わせた船から、中国の朝鮮族密航者の一群を、波の荒い沖合で本船に移す。ここから”運命”の航海が始まる。どうせ短時間で接岸できるものと、ホッとした空気が流れる甲板。まさかこれからとんでもない事件が待ち受けようとは知る由もない。

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時折監視艇の臨検があることを予測し、その際は、普段魚を入れておく船倉に密航者を匿う手はずだけは整えておくのだったが・・・。

一見何気ないことがまさかの事態を呼び、やがて甲板の上は、おぞましい地獄図絵化するのだった。

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⬆︎本船に乗り移る際、海に落ちたのを新人乗組員ドンシク(パク・ユチョン)に助けられたホンメ(ハン・イェリ)は、いつしかドンシクに恋心を抱くようになる。一人だけ機関室に匿われたホンメだったが、地獄の甲板を雨の夜、目撃し、自分の運命を覚悟するのだった。

冒頭、日本ファンに対するキャスト全員から挨拶があるが、あれは最後に持ってきた方が効果的。

佳作。船長に扮するキム・ユンソクの圧倒的なうまさが光る。冒頭、妻の浮気現場を見ても、案外あっさりと対応したり、後の凶暴性を一切感じさせない場面作りがよい。

ホンメになるハン・イェリだが、ほとんど不美人と言ってよい。誰もが整形を受け、個性のない顔ばかりの女優陣にあって、今や貴重な存在だろう。

#28  画像はALLCINEMA on lineから