ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「淵に立つ」

161020 日仏合作 119分 映画祭出品を想定しているから、ちゃんとHARMONIUMというタイトルも付けている。間違いなく佳作だ。いかにもフランス人が好むタイプで、カンヌで「ある視点」部門審査員賞受賞も宜なるかなだ。愚亭にとっては「ほとりの朔子」以来、2本目の深田晃司作品。

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ピクニックへ行って、寝転ぶ一家と男。男の目が笑っていない。

町工場を営む一家、夫婦と女の子、3人の平凡な暮らし。ある日、男が前触れもなく訪ねてくる。夫の古い友人ということ以外、説明がない。謎めいているが、折り目正しく控えめで、女房も次第に心を許す。娘も懐き、習っているオルガンの手ほどきを受けたりと一家に溶け込む。だが・・・

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朝食風景。男は受刑中の癖で、食べるスピードが並外れている。

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次第に男との距離を縮めていく女房。この辺は予測どおり。この後、事件が。そして、男は忽然と消え失せる。

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8年後、若者を採用する主人。若者の正体は?

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このシーンは実際には登場しない。白いシーツを手が。女房の中の心理描写だが、これも見事!

前半は、一体この平穏な日常風景がどう変化していくのか、ドキドキさせられる。そして、ついに事件が発生。直後、なにごともないよう風景が描写されるが、何かが違う。そう、実は8年後の風景だ。ここからの展開は、まったく先が読めず、ハラハラさせられながら、衝撃のラストへ。

音楽も最大限効果を上げているが、色の使い方にも驚かされる。男が纏う色は、白、黒、そして衝撃の赤、これを実に巧みに画面に生かしている。

男を演じる浅野忠信がうまい。カンヌではすでに常連で日本人俳優では一番知られた存在だろう。本役は彼以外、考えられない。深田作品で常連の古舘寛治も突出してうまい!無愛想で、台詞もほとんどなく、時折大声をあげ、何を考えているかまるでわからない主人を、完璧に演じている。

#78 画像はALLCINEMA on lineから。