ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「フェリシーと夢のトウシューズ」

170815 原題:BALLERINA  89分 仏・加合作 原案・監督・製作総指揮:Éric Summer(フランス・カナダの二重国籍。エリック・スメーと発音)

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画質の良さと、肌の質感、街並み、建物のリアルな描き方、細部へのこだわり等で、てっきりピクサーフィルムと思い込んでいたら、なんとフランス・カナダ合作と知って、少々驚く。バレーのシーンもよくぞここまでと思うほど、リアルな仕上がり。

アニメを映画館で見るのはスタジオ・ジブリの「風立ちぬ」以来、久々である。予告編を見て、19世紀末のパリの街並みのあまりに精緻な描きこみ方に圧倒され、久しぶりにカミさんと見に行くことに。

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バレリーナを夢見る孤児、フェリシーがブルターニュにある孤児院を抜け出し、パリへ。艱難辛苦の末、ついにエトワールに昇りつめるまでを描く。

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夏休みでもあり、平日にもかかわらず子連れで満員。日本語吹き替え版のみ。主役フェリシーは土屋太鳳が、他に夏木マリ黒木瞳熊川哲也などが吹き替えを担当している。

たまたま隣に座った女の子は、まだ3歳ぐらい。途中で飽きてしまい、大きな声であくびしたり、動き回るから、連れてきたおじいちゃんはすっかり困り果てた。

#53 画像はIMDbから。

世界堂主催美術展

170814 昔の職場仲間が出品している都美術館へ。

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ウィーンの街角のショーウィンドウを描いた作品。中央に位置するオッサンの顔をしたトナカイに魅せられて描いた作品とか。光の反射をうまく取り入れ、楽しく、夢のある作品に仕上がったいる。

その後、一緒に見た仲間と連れ立って、近くの精養軒へ。折しも梅雨時のような雨が降っているが、屋上庭園でも屋根付きなので、問題なし。上野界隈の風景を楽しみながら、生ビールを酌み交わした。

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「ローザは密告された」

170814 原題:MA' ROSA (ローザおばさん)フィリピン映画。110分 監督:ブリランテ・メンドーサ

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骨太の社会派ドラマ。テーマは、貧困、汚職、腐敗、家族愛、麻薬。フィリピン映画というのは、多分初めて見たような気がする。滅多に日本で上映される機会がないから、仕方ない。本作は、アカデミー外国語部門への出品作で、カンヌ国際映画祭で主演女優賞(ジャクリン・ホセ)を取ったことで話題になった。やや暗いテーマゆえか、東京では、単館上映。ちょっともったいない。

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マニラ郊外の貧民街でコンビニを切り盛りするローザには、ぐうたら亭主と、男女二人ずつの子供がいて、貧しいながらも、まあまあ幸せな生活を築いている。家計の助けになればと最近、少しだけだからと麻薬の扱いも。

ある日、突如地元警察のガサ入れ。20万ペソ(50万円弱)払えば見逃すと言われるが、もとよりそんな大金があるわけでない。夫婦は逮捕され署に連行されてしまう。売人を密告すれば、保釈してやると言われ、売人を売るが、所持金不足、足らない5万をお前らが払えば釈放と迫られる。とんでもない腐敗ぶりだ。

子供達が必死であの手この手でかき集め、最後はローザ自身が夜の街に出て、調達し、警察署に戻る。途中、屋台で串揚げを頬張る先には、店じまいにいそしむ一家の姿が。改めて家族の絆を強く意識するローザだった。

その辺のカメラで全編動画撮影したそうだが、揺れ具合が心地いいほどドキュメンタリー感を漂わせる。警察の腐敗ぶりは、アメリカや中南米など、かなり常態化しているようだが、ここのはヘドが出るほと酷い。日々裏金づくりのためにガサ入れと密告(司法取引ではない)を通じて、必死で生きる市井の人々を、ただ苦しめる存在、これを告発したかった監督の思い入れを強く感じた作品。

どんな環境下でも、たくましく、清々しく生き抜くローザを演じたジャクリン・ホセの見事な演技に脱帽。

#53 画像はALLCINEMA on lineから

またも蝶々夫人、今度はサンパール荒川で。

170813 まさか二日続けて蝶々夫人を聞くことになろうとは。

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こちらは、演奏会形式ではなく、本格的な上演。まあやはり、衣装もつける、演技も入る、舞台のセッティングもあるということになれば、それはどうしても見栄えは違ってくるのは仕方がない。こちらも、オケと合唱はアマチュア。なかなか頑張って、立派な演奏だった。

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ただ、残念なことにこのホール、最近、客席など、改装されてすっかりきれいにはなったのだが、オペラ本公演の場合、反響版の問題なのか、音響がイマイチ!ソリストが少し気の毒な気がした。

そんな中でもタイトルロールを演じた西本真子が素晴らしかった。彼女の蝶々夫人は4,5年前にも一度聞いていて、当時から相当うまかったし、その後、シンガポール、マニラや中国の地方都市でも歌っているから、この役はかなり年季が入っていて、安心して聞いていられた。

演技も堂々としていて、蝶々さんの健気さが前面に出ていて、最後の場面は、どうしても泣けて仕方なかった。すっかり感情移入させられていた。

杣友恵子のスズキも良かった。とりわけ、演技、細かい所作振る舞いが泣かせるのだ。永井和子や鳥木弥生、小林由佳に優るとも劣らぬ演唱はモルト・ブラーヴァ!

美術はなかなか凝っていて、小さいながらも、すっきりした丘の上にある家の趣をうまく表していたように思う。

子役がまたかわゆいのだ。あのような小さくてキャシャな子供をよく探してきたもの。Tu, Tu, Tu!の場面は、今まさに自刃しようとする蝶々さんめがけて子供が走りこんでくるような演出が多いように思うが、この舞台では、スズキに手を引かれて、ゆっくりと庭に出てくる。それに気づいた蝶々さん、庭に降りて子供を抱きしめ、Va! Gioca!となり、改めて自室に戻って・・・チャチャチャンチャン・チャー、ドン これはうまい演出だと思った。

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#44 文中敬称略

Madama Butterfly @かつしかシンフォニーヒルズ

170812 このところ、毎年この時期にこのホールで真夏のオペラが開催されており、昨年はIL TROVATORE。いずれも演奏会形式で、アマオケ、アマ合唱団主催ということで、チケット代は、なんと3,000円!ありがたや、ありがたや。そりゃ装置や演出が入らないとは言え、ソリスト陣はなんとも豪華、それに指揮が今や人気急上昇中の柴田真郁とくれば、酷暑だろうが、遠方だろうが委細かまわず、出かけたくなる。(尤も、この日は酷暑でもなかったし、遠方とは言え、大田区の我が家からは都営線と京成、乗り換えなしでスムーズな移動)

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演奏会形式でオペラは何度も聞いているが、ソリスト陣の力量で特に違和感は感じないものだ。自分の楽譜を持って、ソリストが入れ替わり入退場を繰り返すことになる。男性陣は黒一色だったが、女性陣は、蝶々さんはじめ、スズキもケイトのそれなりに美しいコスチュームで登場。とりわけ蝶々さんは、ゴールドのドレスの上に白の和服風のものを羽織って登場、夜の帳が降り始める頃に、スズキに羽織だけ持って行かせる”演出”。2幕では、シルヴァーのドレスに着替えてTu, Tu, Tu・・・などを熱唱した。

タイトルロールの高橋絵理、もう10年近くもフォローしているが、毎回、進化している演唱で楽しませてもらっている。演技はほとんどなく、楽譜台の前に突っ立って歌うのだが、後で聞いた話では、これが想像以上にハードらしい。重いコスチュームつけて演技しながらの方が大変だろうと考えがちだが、動きがなく突っ立った状態のままで全幕、ほぼ出ずっぱり状態の蝶々さんは、やはり若い高橋でも相当こたえたと告白していた。

ピンカートンのテラッチこと寺田宗永、この人もどんどん上手くなっている。1幕のデュエットもよかったし、最後のAddio, fiorito asilも心に響く歌唱だった。

シャープレスの渡辺弘樹、昨年のルーナ伯爵は喉の調子がイマイチだったが、今回は絶好調、独特の包み込むような中低音の響きがたまらない。

この役は何度もこなしているスズキの小林由佳、演技なしはちょっともったいないと思ってしまう。歌唱も舞台姿も、今やメッゾではトップクラスの存在。これだけ考えても、実に贅沢な布陣である。蝶々さんと歌う花の二重唱は聞き応え、たっぷり!

出番は限られていたが、ケイトの藤長静佳、以前、カルメンを聞いたことがあるが、出番が少ない割に存在感をそれなりにきっちり示せたのは、大したものだ。タッパもあり、選んだブルーのドレス効果も存在を際立たせたか。

最後の場面は、このスタイルの上演で、どのようになるのかと思っていたら、蝶々さん、歌い終わるとスーッと舞台袖に引っ込んで、オケの演奏だけになる。確かに、この方法しかないと納得。

エルデのオケも本当によく鳴っていたし、合唱団も素晴らしい演奏を披露してくれて、大喝采。ソリスト陣からも、何度も喝采をもらっていた。お疲れ様でした!来年は何をやってくれるのか、今から楽しみである。

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終演後はソリスト陣がロビーに出てきてくれるから、ファンとの交流の輪があちこちで広がる。こうして全員が揃ってくれることは、まず滅多にない。もちろん最後まで残っていたファンたちにとっては、垂涎の一瞬で、たちまちカメラ(スマホ)の放列。

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2幕目のコスチュームで写真に収まった高橋絵理たまたまこの日は??歳のお誕生日。重ね重ねおめでとうございました!

#44  文中敬称略