ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「妻への家路」

150306 「帰来」(Gui lai) 英語タイトル:COMING HOME 中国 [監]チャン・イーモウ 110分

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あの日以来、離れ離れになった愛しい夫と、やっと再会できる!生きる希望がやっと妻、ワンイー(コン・リー)の胸に湧き上がる。夫、イエンシー(チャン・ダオミン)が、今やすぐそこ、手の届くところに。

だが、次の瞬間、待ち伏せしていた警官に取り押さえられ、せっかく必死の逃亡を試みたのに、再びもとの強制労働の日々に戻されるのだ。北京駅の陸橋の上での、余りに切ないこの再会劇を、二人の一粒種であるタンタン(チャン・ホウエン)はどんな気持ちで見届けたか。

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⬆︎今日も北京駅で、夫の名前を書いたプラカードを掲げてイエンシーを待ち続けるワンイーの姿が哀れだ。

それから3年、1977年、荒れ狂った文化大革命もついに終焉を迎え、イエンシーも名誉回復となる。晴れて懐かしの我が家へと戻って来ると・・・。待ちわびたワンイーが笑顔で迎えてくれるはずだったのだが。

余りに長きに亘るただ待ち続ける日々、とうとうその心労が極に達したのか、ワンイーはイエンシーを認識できなくなっている。いくら自分だと主張しても、「方さん、どうしてここにいるの?」とイエンシーの知らない人物の名前を口にする妻に、途方にくれることしかできないのか。

一方、バレエの才能を開花させた一人娘のタンタンだったが、父親が逃亡者となったため、大役を射止め損ない、まだ見ぬ父イエンシーに恨みを持つことに。あの日の「陸橋の再会」を当局にタレ込んだのは、誰あらぬ、このタンタンだった。

それから数十年、大雪のこの日、今日もイエンシーとタンタンに連れられ、駅で「夫」を待ち続けるワンイーの姿が。風雪に耐えたその顔には深い皺が刻まれているのだった。

さすがチャン・イーモウ、久しぶりに感動した中国映画で出会えた。もちろんチャン・ダオミンも素晴らしいのだが、それ以上に近年ハリウッド作品が目立つコン・リーの渾身の演技が印象的だ。

こうした家族の悲劇は、あの悪名高き文化大革命では山ほどあったのだろう。今、改めて考えても、ずいぶん罪作りの革命をやったものだとつくづく思う。

 

#16 画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから