ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「リップヴァンウィンクルの花嫁」

160516 原作・脚本・監督:岩井俊二  180分

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ひたすら黒木華見たさに近所の映画館に行った。風変わりな作品だ。岩井俊二の作品はこれまで見たことがないが、やや判りにくい展開を得意とする人らしい。ただ3時間と長尺なのに、それをまったく見る者に感じさせさないのは、そうした工夫が随所に見られるからだろう。

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⬆︎冒頭のシーン。SNSで知り合った鉄也(地曳豪)と待ち合わせる七海(黒木華)。

七海は臨時教員をしながら、コンビニでも働いている普通の女子。SNSで知り合った鉄也と結婚することに。両親が既に離婚していることを隠し、式には親族がほとんどいないからと、なんでも屋の安室(綾野剛)に偽家族の手配を頼むことに。

結婚はしたものの、たまたま床に落ちていたイヤリングを見つけ、夫が浮気をしているらしいと、再び安室に調査を依頼。これは安室が仕掛けた罠だったことに、気付くほどの才覚はない。周りの動きに合わせようという気が強く、自我を持たないフワフワした生き方の七海を引っ掛けるのは、海千山千の安室にしてみれば、至極たやすいこと。

だが、安室は七海を引っ掛けてどうしようとするのか、彼の意図は最後まで不明のまま。その後、両親の離婚のことも、挙式に現れた偽家族のことも相手の母親にバレてしまい、あっさり離婚されてしまう。(なぜバレたのかは描かれていない)

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家を追い出されて、⬆︎どこにも行き先がなくなった七海は途方に暮れる。そして、今回もまた頼れるのは安室だけ。その後のことも、結局安室だけが頼りで、住む家の紹介、アルバイトの紹介まで面倒を見てもらうことに。

そして、さらに安室が紹介する月100万円と言う、豪邸住み込みメイドを引き受けるのだが、そこで出会う真白と言うAV女優、里中真白(Cocco)が、実は安室のクライアントというわけだ。ここからの展開が一番の見せ場となる。

岩井監督が仕掛けた虚構と現実のメタファーが理解できないと、この作品が何を言おうとしているか、消化不良のまま映画館を後にすることになる。

岩井監督は、黒木華を意識して映画化を考えたというから、やはり彼女はピタッとはまっていたが、綾野剛もはまり役だと思う。この役は他の役者では、サマにならないと感じた。終盤、真白の長いセリフに重要な意味が隠されているのだが、演じるCoccoというのが、とてもAV女優とは思えず、その分リアリティがなく、そこが残念。

#38 画像はALLCINEMA on lineから