ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「愛、アムール」

130309  TOHOシネマズ川崎 原題:L'Amour [監]ミヒャエル・ハネケ、[出]ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ、イザベル・ユペール

 

普段と変わらぬ静かな朝、小さな食卓、聞こえるのはとぎれとぎれの夫婦の会話、食器の触れる音、咀嚼する音・・・。突然、固まる妻、何を聞いても無反応。慌てて誰かを呼びに行こうとする夫。数分後、何事もなかったように振る舞う妻。何が起きたのかいぶかしむ妻に事情を説明する夫。これが、この後、二人を待ち構える地獄への入口であることは、無論二人は知らない。

 

ピアニストだったジョルジュ(トランティニアン)とアン(リヴァ)はパリ市内の、古いが高級アパルトマンで二人暮らし。時折、一人娘エヴァ(ユペール)⬇が訪ねて来るか、二人で昔の教え子のピアニストの演奏会に出かけるぐらいで、単調だが幸せな日々だったのに。

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映画は、認知症の初期段階から急速に悪くなって行くアンの姿を、ほとんど室内のみという限られた空間で、残酷なほど淡々と描いて行く。命の尊厳と共に、人は誰でも通らねばならない人生の最終段階を鮮やかにも過酷に見せてくれる。

 

若き日、それぞれに仏映画界で大活躍したトランティニャンとリヴァが、今は既に83歳と86歳である。昔スクリーンで馴染んだ彼らの姿を知っている者には、かなり辛い映像の連続で、正直、気が滅入るし、唐突にやってくる結末にも、実に暗澹たる思いで映画館を後にした。

#17 画像はALLCINEMA on line

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岡田英次と撮った「二十四時間の情事」(HIROSHIMA, MON AMOUR) 32歳のエマニュエル・リヴァ