ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「嘆きのピエタ」

130627 109シネマズ川崎 原題はハングルでピエタ(と思うが)。久しぶりに観た韓国映画。104分 [監」キム・ギドク 

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本当に邦画タイトルの付け方は、結構研究工夫しているなと、最近感心することが多い。これも、単にピエタだけでは、「ん?」、尤もそこに「嘆き」をプラスしても依然『ん?」かも知れないが、タイトルとしては、断然厚みが出ている気がする。誰もがイメージするピエタは若き日のミケランジェロが彫ったピエタ像(サンピエトロ寺院)だろう。要するに磔刑から下ろされた我が子イエスを抱く悲しみの聖母の姿。

 

この作品は、まさにそこに照準を合わせて作られている。哀しみから憎しみ、復讐、悔悟、贖罪、死、など、本作での母親役のセリフにも登場するこれらがキーワードになって、スリリングに展開していく秀作。

 

舞台はソウル市内でも、清渓川周辺に広がり、町工場がひしめく特別な区画。かなり荒んだ印象を与える。

 

主人公は、そんな地域でひっそりと暮らす30歳の独身男、ガンド。天涯孤独の一匹狼で、高利貸しの取り立てを生業としている。それも10倍の金利という、日本では完全に違法となるハチャメチャな高利で、取り立てに応じなければ容赦なく、相手を身障者にして、保険金をいただくという、まぁ超アクドイやりくちで、彼の姿を見ただけで借りた側は震え上がる、蛇蝎のような存在。(演じるイ・ジョンジンは、威圧感のあるガタイだが、目が優しいから余り凄みはないが・・・)

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そうやって、債務者を次々に締め上げる日々だが、ある日、見知らぬ女が突然現れ、30年前にガンドを捨てた母親と言って、しきりに謝ったり、家事をやってみたり、編み物をしたり、いつの間にかガンドの狭い家に住み着いてしまう。

 

始めは警戒するガンドだったが、次第に気を許し、しまいにはほんとに自分の母親と思い込み始めるのだが・・・・さぁて彼女の狙いは、本性は。

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そこから一気に観客の予想を裏切る展開が。何やら、歌劇「トロバトーレ」のアズチェーナを思い出してしまった。でも、彼女を演じるチョ・ミンス、演技もさることながら、まことに美貌である。

 

#48 画像はALLCINEMA on lineから